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 その細い手に指を絡ませる。  光樹はそれを見ながら微笑んだ。  どちらからともなく手を下ろす。 「ねえ、名前教えてよ」 「貞治」 「案外あっさり教えてくれたね。貞治かあ……應治の方が似合ってない?」 「失礼なこと言うな……いや、光栄です、お姫さま。か?」 「光樹と貞治、愛人関係~」  唄うように口ずさむ。 「恋人じゃないのか」 「貞治には可愛い女の子がいるかもしれない。出来るかもしれない。俺はいつでも二番手なの。一番がいなくてもね」  切なそうに言うくらいなら言わなければ良いのに、と一蹴することはできなかった。 「どこ行きたい?」 「誘拐犯が人質にそれ訊かないでしょ」 「愛人は愛人に訊くだろ」  光樹は嬉しそうに俺を見上げた。  その髪を撫でる。  なんか、河原で見ると犬みたいだ。  あんなに猫みたいに妖しかったのが嘘のように。 「貞治のお城に行きたい」 「俺の家、凜たちにバレてるぞ」 「良いじゃん。それでも。もうあそこには帰らなくてすむなら、天国だよ」  状況が変わったから。  そんな口振り。 「そうだな」 「そうそう」 「案内するよ」  立ち上がって差しのばした手を力強く光樹が握って歩き出す。 「これからが大変だよ」 「そうだな」  けど暫くは、少なくとも家に着くまでは、この手を握っていられそうだ。 「凜さん、どうします?」 「明日連れ戻しに行く……あのガキ」 「明日でいいんですか」 「今夜邪魔してみろ。光樹に全員殺されるぞ」 「はあ……」 「一体どっちが守ってんのか、どこまで信じてんのか……な」

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