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finger06

 帯乃は意地悪く唇を歪めた。 「ねえ、タヤちゃん。謝るんなら一晩付き合ってくんない?」 「酒……ですか」 「アッチの処理」 「へ?」  帯乃はタクシーを止めて乗り込んだ。  戸惑うタヤを引き入れる。 「どこ行くんですかっ」 「イイトコ。運転士さーん。あの信号を左に曲がって道なりに行って」 「はいよ」  車が発進する。  シートベルトを締めながらタヤは目を泳がせていた。  景色を眺める隣のスターをちらちら見ながら。 「ここで」  壱万円を置いて外に出た帯乃を追う。  目の前には超高層マンション。  余りの高さに首が痛むほどだ。 「何してんの、早く来なよ」  電子ロックを解除し、豪勢なロビーの向こうで帯乃が呼んだ。  二人はエレベーターに乗り最上階に上がった。  ウイーン。  一歩踏み出してからタヤは目を疑った。  扉が一つしかないのだ。 「ま……まさか」 「ん? ああ、ココ買い占めちゃった」 「帯乃さんの家ですかっ」 「別宅、が正しいけどね」 「本宅があるんですね……」 「そっちは凄いよ」  そう言いながら玄関に入っていく。  後から続いたタヤは言葉を失った。  黒いシックな壁を点々とライトが下から照らし上げ、奥に見えるリビングにはシャンデリアが見える。  美しい像が廊下に並びこちらを見下ろしてくる。  何もかもが圧倒された。  リビングの壁一面に並ぶCDにも、絨毯の広さにも。 「な……何畳あるんですか」 「三十……三十五?」  上着を脱ぎながら帯乃は曖昧に答える。 「えっ。うわ、すげ……」  口を押さえてしばらくタヤは部屋を見渡した。  その様子が余りに可愛いので帯乃は携帯でパシパシ撮るが、気づく余裕もないようだ。 「感無量ですって顔してる」 「いやその……感無量です」 「あはははっ。ところでタヤちゃん迷ってたの、さっき」 「あ、はい」  即答だったのが可笑しくて帯乃は噴き出した。 「東京初めて?」 「慣れなくて……」 「明日入りの前に案内したげるよ」 「えっ。明日?」

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