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finger07
きょとんとするタヤに近づき、にっと笑ってパーカーのチャックを下ろす。
「ちょちょっ、帯乃さんっ?」
するりと下に落とし、Tシャツ姿になったタヤに囁く。
「今日は泊まっていきなよ」
わかりやすく紅くなるなあ。
帯乃はタヤの幼い横顔を見て癒された。
それから手を引いて風呂場に向かう。
「おっ、俺着替え持って」
「なくて当たり前。貸したげる。ってか好きなのあげるよ」
廊下を突っ切り、黒い扉を開く。
ふわっと良い香りがバスルームから漂う。
タヤは顔を上げて固まった。
「凄いでしょ。ここはこだわったんだ」
壁一面のガラス。
東京の夜景を空から見下ろしているみたいだ。
ネオンにビルの明かり。
遥か下の車のヘッドライトが線になってちらつく。
「天窓作っても星はこんなに見えないからさ」
「いやもうなんていうか……ってなんで帯乃さん脱いでんですか!」
「え? ダメ?」
バッと顔を覆ってタヤが壁際に後ずさる。
上半身を露にした帯乃は、ロザリオのチェーンネックレスを首もとに垂らしていた。
浮き出た鎖骨と締まった体。
血管が筋のように走る腕はつい見てしまう美しさがある。
「腹筋、綺麗ですね……」
ダンサーのタヤは筋肉には自信があるが、帯乃の肉体に戸惑いを隠せなかった。
そういえばジムで有名だった。
「触る?」
帯乃がタヤに詰め寄る。
「えっ、え……」
トンと背中が壁につく。
帯乃は意地悪く手を付いてタヤを見下ろした。
目の前でスターの裸を目にしている状況に慣れろと言う方が無理がある。
「あの……帯乃さん」
「ん?」
サラリと垂れた髪が頬に触れそうな距離。
「……近いです」
「うん。知ってる」
じーっと。
吸い込まれそうな深い瞳に見つめられ心臓が落ち着かない。
タヤはゆっくりと手を上げた。
震える指で帯乃の腹に触れる。
「あっ」
「へっ? す、すみませんっ!」
わざと甘い声を上げた確信犯は濡れた眼でタヤを見つめる。
「どう?」
「か……硬いですね、やっぱ」
真っ赤になって答える。
やば……エロい。
帯乃はすっと離れて微笑んだ。
「脱いで」
「えっ」
「後から入ってきなよ」
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