47 / 56
第47話
♪♪♫♬〜♫♪♫♬〜♪♫♪〜
「体全体でリズムを取りましょう」
「ええっ!?」
「手は腰に当ててー。1、2、1、2」
「ちょっ、ランハート」
名曲『月に寄せる歌』と全く合ってない。
(これって、レイディオ体操??)
大きく手を上げてー、背伸びの運動。……なんて言わないよな?
「1、2、1、2……アイル様もご一緒にー」
「……1、2、1、2」
一先ずランハートの指示に従おう。
手は腰に、つま先でリズムを取って……ハッ!
(もしや)
このつま先立ちの繰り返しがムーンウォークの準備運動になっているのか。滑らかで且つしなやかな足首の動きはムーンウォークに必須だ。
(これで俺もキモモマイコドリに!)
「2、2、3、4!張り切って行こう」
「フフ、アイル様もやる気ですね。2、2、3、4」
「もちろん!」
キモモマイコドリに向かってレッスンだ。
手は腰に当てて、リズムは1、2、1、2。
「お上手です。アイル様」
俺達の動きは、最早優雅な『月に寄せる歌』を無視している。
もしもドヴォルザークがここにいたら、目を見開いて腰を抜かすだろう。
ドヴォルザークが尻もちをついたっていいんだ。俺達は世界一のキモモマイコドリになるのだから。
「お手を」
差し出された手に手を乗せた瞬間、抗えない引力にぎゅっと引き寄せられた。
大気圏を突破して、地上に落ちる流星のように。
俺の体は彼の腕の中に囚われる。
「踊りましょう。愛しき我が后」
ともだちにシェアしよう!