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第52話

「スノーフレイクのように頭を垂れてしまって……あなたにそんな顔をさせるつもりではなかったのですが」  指先が一筋、頬を撫でた。 「やはり、ご無理を申し上げているのでしょうか」 (違っ、俺が困ってるのは嫌だからじゃなくて)  長い睫毛がふわりと湖水色の瞳を覆った。  俺が答えればいい。……うぅん、頷けば。  たったそれだけでいい事なのに。  どうして。  頬を撫でた手が髪を撫でた。  よしよし……  大人が子どもをあやすかのように。 「いいんですよ、時が来たるまで……今は、このままで」  ダメだ。それじゃ。  俺の我儘で、何もできない俺のせいで。  ちゃんと伝えなきゃ!

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