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夢見る俺たちの春休み (4)
「……こんちくしょう」
唐突に、視界が動いた。
手首を掴まれたと思ったら、身体ごと引っ張られる。
ふわっと全身が浮いて、でもすぐに逞しい腕の中に閉じ込められた。
「せ、先輩……?」
「それってさ、春休みまで待たなきゃダメなの?」
「えっ」
「今日、誰もいなくはないけど……みんな、帰り遅いんだ」
先輩の声が、直接耳に流れ込んでくる。
湿った吐息に鼓膜を揺らされ、心臓の動きがおかしくなってきた。
落ち着きたくて先輩の背中に手を回すと、俺のものとは別のどきどきが合わさる。
見上げると、先輩と視線が重なった。
ふたつの瞳は、いつもよりも、ずっとずっと優しい。
「俺のこと、嫌になってない?」
「え……?」
「また……俺とえっち、してくれるの……?」
先輩は、目をまん丸にして驚きを表現した。
俺だって、バカなこと言ってるってわかってる。
でも、不安で、心が割れてしまいそうなんだ。
俺は先輩より年下で、比べものにないくらい子供で、好きになったのだって先輩が初めてで、大好きだからどうにかしたくて、でもどうしたらいいのか分からなくて。
「ごめんね」
先輩の四角い指先が、俺のほっぺをゆっくりとなぞる。
「不安にさせるつもりじゃなかったんだ。クリスマスの日、優しくしたかったのに、理人があまりにかわいかったからどんどん抑えが効かなくなって……泣かせるつもりじゃなかったのに、泣かせた」
「そ、れは……」
「怖がらせたなって反省してたんだ」
「ち、ちがっ……」
違うのに。
俺が、先輩のこと怖がるわけない。
だって、俺は。
俺は、こんなにも先輩がーー
「好きだよ」
「先輩……」
「理人のこと嫌になることなんて一生ないし、えっちだっていっぱいしたいって思ってる」
どうしてなんだろう。
どうして、佐藤先輩は俺がほしい言葉がわかるんだろう。
どうして、
「んっ……ん、んん!?」
「こうやって愛を語りたいのは山々なんだけど」
先輩はあっという間に俺の唇を奪うと、それを押しつけてきた。
硬く、おっきくなったそれを。
「もう、挿れたい」
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