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夢見る俺たちの春休み (8)

「ああ、かわいかった」 「……」 「ものすごくかわいかった!」  佐藤くんが、俺を愛でている。  ひたすら、愛でている。  ラブホのベッドの上で。 「今度は、制服着てやりましょう」 「……や」 「や、じゃないでしょ?」 「……」 「理人さんもノリノリだったじゃないですか」 「……」  いや。  だから、なんで。  どうしてこうなった!?  どうしたよ、俺!  禁断の〝先輩プレイ〟は、佐藤くんの専売特許なんじゃなかったのかよ!  本人の目の前で堂々と特許感を侵害するとかっ……  ノリノリだとかっ……  先輩と一緒じゃなかやだっとかっ  あっああああっ……  誰かっ……  誰か今すぐ俺のために穴を掘ってそこに俺を放り投げてくれッ……! 「全部佐藤くんのせいだからな!」 「なんでそうなるんですか」 「なんででも! 俺にだってわかるかよ! でも、とにかく佐藤くんがぜーんぶ悪いんだ!」  そうじゃないと、いたたまれないんだよ!  俺がッ! 「だ、だいたいだ! 俺が夢で見た『佐藤先輩』は佐藤くんみたいにガツガツなんてしてなかったし、もっと〝先輩の余裕〟ってものを感じさせくれたし、俺がやだって言うことは絶対しなかったし、でもすんごく気持ちよくしてくれて、極上のえっちを俺に教えてくれたんだよ!」 「……へえー?」 「な、なんだよ! あ、おい、ちょっ……」 「じゃあ、佐藤先輩バージョンも体験してみます?」 「……ッ」  その時、俺は、あるひとつの考えに辿り着いた  もしかしたら、佐藤くんの変態スイッチを押しているのは、俺自身なのかもしれないーーと。 「大丈夫だよ、理人。怖がらないで。全部、俺に任せて……?」  そして、その考えは、きっと正しいのだろうーーと。 「あ、や、ぁ……あんッ♡」  fin

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