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第1話

 パンッ!!  小気味良い音の後に、ジンワリと自分の頬が熱を持ち始める。  途端に周りにいた人達がざわつき出し、俺達が注目を集めるようになると  「最ッ低!!」  一際大きな声で更に注目されたいのか、目の前にはギッと俺を睨んで、その目から今にも大粒の涙が零れそうなセフレがいる。  「だから、何もしてね~って言ってんじゃん?」  「は?証拠あるんですけど?アンタが浮気した相手、私の友達の友達なんだからねッ!」  あ~~………、それは詰んだな。  その台詞を聞いて俺は大きく溜め息を吐き出すと、諦めたように肩を竦め  「だから、何?俺ミサキに付き合おうとか言ってね~よな?」  「はぁ?……、することしといて何言い出し……」  「だ~か~らッ、彼女でもね~のにビンタされる筋合い無くね?」  「……ッ」  流石に俺が言った言葉に傷付いたのか、ミサキは口をギュッと引き結んでポロリと一滴目から溢れ出した水滴が頬に道筋を作る。  あ~~~……、面倒臭い。  「何回かヤった位で彼女面されんのも面倒だし、ミサキが嫌なら別れよう?ま、俺達始まっても無かったケド」  俺はそう言うと、壁にもたれ掛かっていた上体を起こしてクルリと踵を返す。  「このッ……、腐れヤリチン野郎ッ!」  背中にミサキの台詞が刺さるが、俺は涼しい顔をして大学のカフェテラスを出て行く。  ザワザワと俺達の事を遠目に見ていた野次馬から、『酷い』とか『最低』とか聞こえてくるが、言われ慣れている俺にはさほどダメージは無い。し、直ぐに次が見つかる事も解っている。  俺の名前は、佐久間清文。  大学三回生の俺は、ハッキリ言ってモテる。  モテるが故に彼女を作らず、何人かのセフレと楽しいお付き合いをして大学ライフを謳歌しているのだが、さっきみたいな女もごく稀にいてその度にヒソヒソと俺の事をディスる奴もいる。が  「清~、見たよ。良いビンタもらってたね~」  「痛そう、大丈夫だった?」  大学のカフェテラスから出た俺の背中に、面白そうにそう声をかけてくる奴もいる。  俺はクルリと声のした方へ振り返り  「マジで最悪だわ、今日遊ばね?慰めてよ」  ワラワラと俺に近付いてくる男女に向かって呟くと  「アハハッ、切り替え早過ぎ無い?」  「あ、今日パーティあるよ?一緒に行く?」  と、俺を囲んで一つのグループが出来上がる。  「何、何のパーティ?飲まないとやってらんね~わ」  なんて大袈裟に打たれた頬を手の平で覆いながら言葉を返すと、そんな俺をからかうようにワッと笑いがおきて周りが一気に賑やかになる。  俺がいつも連んでいる奴等は、大学では目立つ部類のグループだ。  皆自分が俺同様に他の人からどう見られているのか解っている奴等だし、それ故に遊び慣れている。そんな奴等と適度に連んで、深入りはしない。  俺は誰に対しても自分の金や時間、労力を使う奴は馬鹿だと思っているし、相手に使う位なら惜しみ無く自分に使いたい主義だ。だから恋愛感情も不要。そんな感情があるから相手に振り回される。さっきの女みたいに自分の醜い部分をさらけ出さないといけなくなる。  気持ち良い事だけ。体の関係だけで十分だろ?  アハハ。と笑いながら今日の予定を埋めて、俺達は講義を受けにその場から歩き出した。

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