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はざまの中の僕らの話 我慢は禁物【β×Ω】 | むらくもの小説 - BL小説・漫画投稿サイトfujossy[フジョッシー]
目次
はざまの中の僕らの話
我慢は禁物【β×Ω】
作者:
むらくも
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我慢は禁物【β×Ω】
行家
(
ゆきいえ
)
とパートナー申請をして半月ほど。 二人で手分けしていた予防活動が一人に戻ってしまい、相も変わらず校内を忙しなく動き回っていた。 けれど諸雑務は副会長の提案で、生徒会のサボり魔αどもに丸投げして身軽になった。提案者は目の上のたんこぶをこき使う口実が出来て毎日楽しそうにしている。 おまけに助手として行家がついてくれているお陰で一つの案件にかかる時間は半分程度になり、負荷がかなり減った。フェロモンに暴露する時間が長いほどヒート症状が出やすく、結構な頻度で薬を飲む羽目になっていたからだ。 何だかんだで充実した毎日を送っていた、ある日。 「毎回悪いな、
相楽
(
さがら
)
」 「いえ、私に出来るのはこれくらいですから」 長身の同級生にヒート状態から落ち着かせたΩの生徒を預けて、ゆっくりと歩いていく後ろ姿を見送る。 相楽はそれなりの規模を誇る家の長男だが、β故に跡取りの座を自ら降りたという。意地でも家に認められようと足掻いていた時、力になりたいと一番最初に協力してくれた良い人柄の男だ。 「しっかし、謙遜しすぎる癖はどうにからならないものか」 ヒート事故は事前に察知が出来ればいいが、そうでない事の方が多い。 そんな時に走り回ってくれる、フェロモンに影響されない人材はこの上なく心強いのだ。その背中は我関せずな態度を取りがちな他のβにも良い影響を及ぼしているというのに。 何せ自己評価が低い。褒めても感謝しても殆ど響かないのはよろしくない。 ……自己評価も自尊心も、能力に比例して恐ろしく高い副会長と真逆だ。あの二人を足して割れば丁度良いのに。 そんなことを考えていると、ぞわぞわとした違和感が背中を駆け上がってきた。嫌というほど覚えのある感覚。どうやらヒート状態になっていたΩのフェロモンに暴露しすぎたらしい。 じわじわと息が上がって体温が上昇してくる。強くなっていく反応に、これは駄目だと壁にもたれて座り込んだ。 少し前なら鎮静剤を口に放り込んで態勢を整えるところだが、頻用しすぎて耐性が出来てしまったらしい。こうなってしまったら落ち着くまで待つしかない。 「
仁科儀
(
にしなぎ
)
先輩?」 座り込んだ俺に気付いたらしい行家が、しゃがんで目線を合わせてきた。心配そうな瞳にじっと見つめられると少しくすぐったい。 「大丈夫だ……少しじっとしていれば落ち着く」 体温が上がっているからだろうか。気遣うように額に触れる恋人の右手は、どこかひんやりとしているように感じた。 ……行家が近くに居ると気分が落ち着く。Ωのフェロモンを放っている時以外の話だが。 触れる皮膚の感触が気持ちよくて、思わず左手も手に取って頬擦りをする。だがその手はひくりと少し震えて離れていってしまった。 遠ざかる行家の足音。 ガラガラと閉まる扉の音。カチャンと音がしたのは鍵だろうか。 それから少しして、窓のカーテンが一枚ずつ閉まっていく。 ぼんやりとその音を聞いていると、振り返った行家がこちらへ歩いてきた。少し頬の赤い顔がもう一度俺を覗き込んでくる。 そっと行家の手が固くなりつつある下半身に触れて、行動の意味をようやく理解した。 「……やめろ」 「このままはつらいだろ」 「だめ、だ……お前を鎮静剤代わりにするつもりはないんだ」 効かなくなった鎮静剤の代わりに食われてやれと副会長が言ったのを覚えていたんだろう。律儀なことに、ヒート状態になりかけている俺に食われようとしてくれているらしい。 けれど、それは嫌だ。 まるで自分自信を人質にして言うことを聞かせているようで。行家との関係を変質させてしまいそうで。 「先輩、忘れてないっすか。アンタの側に居るとオレもおかしくなるってこと」 行家の腕が体を包む。 一気に距離がなくなって、ふわりと甘い香りが鼻先をくすぐった。途端、脳裏に少し前の行家の姿が浮かんでくる。 熱くなる体をもてあましていた、あの時の姿を。 「……ゆ、き、いえ……」 「前は気付いて抜いてくれてたのに……恋人になったらほったらかしかよ」 それはそうかもしれない。あの時は協力者を引っ張り込もうと気を遣っていたし、鎮静剤も効いていて余裕があった。けれど今は自分がトばないようにするだけで必死だ。 密着した体が、耳元にかかる吐息が、自分に負けず劣らず熱い。俺を気遣って我慢していたのだろうか。 とろんと蕩けたような瞳が俺を見ている。ぐいっと押し付けられた股間は固い。 熱をもった唇が口元に触れてきて、中に舌が入ったと思えばそのまま押し倒された。 しばらく押し倒された体勢のまま抱きあって、口付けしあって。体は落ち着くどころか益々熱をもっていくようだった。徐々に強くなっていく甘い香りに頭がくらくらして上手く思考が回らない。 「ん、ぁ……ッ」 思わず堪えていた声が溢れてしまって口元を押さえた。 きっちり着ていたはずの服はいつの間にか上がはだけている。素肌に直接行家の舌が触れて、刺激するようにゆっくりと撫でている。 体が溶けてしまいそうだ。 α寄りのヒート状態になるとはいえ、体の小さなβの俺は組み敷かれたまま。自分より体格のいい行家は欲にまみれた顔で俺をその身の下に閉じ込めている。 ……そんな相手を食いそうな顔してるΩなんて見たことないぞ。 βに近いΩというのは、ヒートでも男としての本能が増幅されるのだろうか。明らかにぺろりと舌なめずりをして顔を近付けてきた。 口に、鼻先に、頬に、耳に、顎に。 何度も口付けが降ってくる。ついでに時々舐められる。まさか物理的に食うつもりじゃないだろうなと思えてくるほどに。 「っは、お前な……抜かずに興奮させてどうするんだ」 「かわいい」 「は?」 「触られてる時の先輩、かわいい」 すっかり熱で蕩けた瞳と緩んだ口元がにたりと笑む。先に反応が出た俺より、よっぽど興奮しきっているんじゃないだろうか。 「……ッ、不服、だな……!」 「っあ!」 起き上がりながら軽く体当たりをして怯ませる。ふらつく全身に力を込めて、何とか上下をひっくり返した。 何が起きたのか理解が追い付いていないらしい。組み敷いた行家は困惑した様子でこちらを見つめている。 その表情のせいだろうか。ひっきりなしに電気の様な刺激が背筋を走り抜けてゾクゾクする。 「自分から誘ったからには……大人しく食われてくれるんだろうな、行家?」 「…………あ、っ」 仕返しに上着とシャツのボタンを外す。肌着を引き上げてやると微かな甘ったるい声が耳をくすぐった。 性急にベルトを外して、横たわる体の下着の中へ手を突っ込む。何度か擦ってやるとか細い声が行家の口元から転がり落ちてくる。 すると欲にとろけながらもギラついていた視線が、あっという間にほどけだした。その顔は何かに戸惑うような、恥じらうような表情に変わっていく。 「気持ちいいか?」 「っあ……! んぅ、っ……ン……ッ」 少し低めの声で囁くと、びくんと組み敷いた体が震えた。行家のモノを刺激する度に唇が甘ったるい吐息を漏らす。 欲に沈みかけている瞳がちらりと俺を見た。 下着の中ですっかり固くなっているから苦しいんだろうか。 そう思ってずるりとそれを引き出すと、その刺激にすら啼き声を上げる。しばらく抜きあっていなかった体は敏感になっているらしい。 同じように立ち上がった自分のモノを行家のものと重ね合わせて。まとめて擦ると行家がぎゅうっと抱きついてくる。 あ、あ、と宙に溶けていく声と荒い呼吸の音。つられるように動きが早くなっていく己の手。 達するのにさほど時間はかからなかった。 「っ、う……?」 「…………治まらない」 足を捕まれた行家は荒く呼吸をしながらこちら見つめてくる。どくどくと打つ騒がしい脈が落ち着かない。達して脱力した足を開かされている扇情的な姿から視線が逸らせない。 まるで沼の底から抜け出そうともがいているようだ。湧いてくる欲から抜け出せない。初めてヒート紛いを起こした時ぐらいしか、ここまで箍が外れた状態になった記憶はない。 ……お守り程度だと思っていたが、あの鎮静剤はなかなか効果的だったようだ。 「せん、ぱ」 「行家のもまた固くなってるな」 完全には力尽きていないそれをひと撫ですると、また少し固さが増した気がする。その筋を撫でてやるだけ行家はひくりひくりと体を揺らして吐息を漏らした。 「ん、っく……っあ……ヒート、中、だと、こう、なる……」 「……ちゃんと抑制剤は飲んでいるのか?」 大きく肩を上下させている行家の顔を覗き込む。 βに近いせいか警戒心の薄い恋人は、第二性別が分かっても抑制剤を飲み忘れたりする事が多いらしい。 フェロモンの抑制に神経を使う必要があるΩにとって、言語道断の悪習慣だ。他は良いとしてもこれだけは改めさせなければ、と。そう心に決めてかなり口うるさく注意しているのだが。 すると行家はキッとこっちを睨んできた。 「の、んでるしっ……! こ、れはっ、先輩のッ、せい……ッ!」 ――そういえばそんな事も言っていたか。 強いヒートの様な症状が出るのは、俺の側に居る時だけだと。 あられもない格好で俺を睨み付けてくる瞳に一際強く背筋がぞくぞくしてくる。皮膚の下をじわりじわりと広がっていく刺激に溺れそうになりながら、すっかり固くなった二人のそれを行家の股間に押さえつけた。 「そう、だったな。なら……責任はじっくりとらせて貰おう」 「ッ!? う……!?」 重ね合わせていた二人のそれを挟むように身を重ねる。擦り付けるようにゆっくり動かすと、こちらを睨んでいた瞳がぎゅうっと強く閉じた。 「手でするより本番みたいだろ?」 「……っひあ……ッ」 逃げようとする行家の腰を掴んで軽く体を押し当て、とんとんと規則的に刺激をしてみた。間髪入れずに自由になった行家の手がバッと口元を押さえる。 溢れてくるはずの音がそのせいでこもって、外に出る事なく消えていく。耳をくすぐるはずの、甘い音が。 勿体無い。 「声を聞かせろ、行家」 「い、ゃっあ!? ぁ、まっ、あっ、ぁあぁああぁ……ッ!」 身を傾けて行家の手を頭の横に押し付け、そのまま重ねた場所を突き上げるように揺すってみた。すぐに溢れだした甘い声音に俺の動きは無意識に早くなっていく。 柔らかい肌に挟まり擦れるその刺激と、とろけた声と吐息を忙しなく吐き出す行家の姿で目の前がチカチカする。眩しい。息も苦しくなってきて限界が近い。 そう思ったのも束の間、ふと達した恋人の快感に沈んだ顔が視界に入って。ぶわりと全身を駆け巡る気持ち良さに驚く間もなく、あっさりと限界まで登りつめてしまったのだった。 「……仁科儀先輩は我慢禁止な。ちゃんと発散てくんないとオレがもたねぇ……」 ぐったりした様子で教室の床に横たわる行家はポツリとそう呟く。 本能に流されて何度も達し続けたせいか、二人仲良く力尽きて動けずにいた。まさか鎮静剤が無いだけでここまで盛る羽目になるとは。半ば自分自身に呆れながら行家の言葉に頷く。 「それは反省する……で、発散の頻度は? 毎日でも?」 こちらを見ている顔をじっと見つめ返すと、ほんのり赤みが差していた頬が更に赤くなる。 「しゅ、週一回っ! 週一で勘弁してくれ!!」 「週三回」 「二日おきとかほぼ毎日じゃねぇか! 週一!」 「なら、週二」 「オレそんな慣れてねぇんだよ! 週一ッッ!!」 「俺も慣れている訳ではないが。なぁ、行家……週二で」 意識的に困った顔を作ってずいっと近付くと、うぐっと行家の言葉が詰まった。少し心配になるくらいにちょろい。そのままじいっと見つめていると、やがてそろりとその視線が外れていく。 「くっそ……分かった、じゃあ週二! 頼むからこれで落ち着いてくれ」 「ん。努力する」 顔を真っ赤にした行家は少し悔しそうだ。学生が放課後の教室で一体何の話をしているのか。そう考えると我ながら笑えてきてしまった。 話をしていると少し体力が回復してきたらしく、行家がもぞりと起き上がる。ふとドア横にかかっているカレンダーが目に入った。 「……なぁ。週二回というのは日曜始まりか?」 「え? えーと、まぁ、それでいいんじゃねぇの」 少し驚いた顔だったが、どうにも深く考えている様子はない。想定通りの返答に思わず口角が上がっていく。 「そうか。じゃあ明日もしていいんだな」 「は? 何のために週二って決めたんだよ」 「明日で今週が終わる」 「は……?」 鎮静剤代わりにしたくないと思っていた己の頭も、行家からの提案だと思うと一気に欲どおしくなっていた。 こんな切り返しは想定もしていなかったのだろう。ぽかんとした顔で俺の言葉を咀嚼しているらしい。 鳩が豆鉄砲を食らったような、とはこんな顔を言うんだろうか。必死で動いているであろう行家の思考が終わるまで、にやついた顔を隠せないままじっと待つ。 ……明日は土曜日。日曜始まりなら一週間の最終日にあたる。 しばらくすると脳内の処理が終わったようだ。ぽかんとした顔が赤くなって、一気に眉が吊り上がっていく。 「っな、なに言っ、ふ……っ、ふざけんなぁぁぁぁぁぁ!」 発せられた行家の声は思った以上の大音量だった。さっきまで体力なんて残っていませんと言わんばかりの弱々しい表情だったくせに。 火のついた爆竹のように喚き散らす恋人を宥めすかしながら、明日はどんな態度を取るんだろうかと考えを巡らせる。 ――応えてくれても、断固拒否でも、どっちでもいいんだ。 最初の頃はちょっかいをかけると心底うんざりした様子だったのに。今は怒りながらも、俺が近くに居る事を拒否したりしない。俺の言葉に真っ直ぐ反応してくれる。俺を見つめて考えてくれる。 それがとても嬉しい。 くすぐったい気持ちに何処かふわふわとしながら、抗議の噴出が落ち着いたらしい行家をぎゅっと抱きしめた。
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