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第11話 この手の感触がヤバいんだ

食事の準備ができたらいよいよ酒だ。 酒は色も綺麗だって言ってたから出来るだけ透明なグラスを選んで……っと。 「ああ、いいね」 「うわっ」 いきなり耳の側で声が聞こえて、俺は度肝を抜かれた。いつの間に後ろに立ってたんだよ。 チェイス室長はオレの肩に左手を置いて、右手で肉が乗った皿をコトリとテーブルに置く。そっか、肉を持ってきてくれたのかとは思ったけど、オレは内心めちゃくちゃ焦っていた。 だって……肩に触れた手から、めっちゃ濃密な魔力が感じられて仕方がない。 この前も思ったけど、この手の感触がヤバいんだよ。 魔力だけじゃなくて直に触れてるっていう気持ちと、感じる魔力の濃厚さが、オレの敏感なセンサーを刺激しまくってしまう。チェイス室長は多分今はたいして意識すらしていない筈なのに、勝手に体が反応して、恥ずかしく感じてしまう自分が嫌だ。 動揺すまいと思うのに、チェイス室長の手から伝わる熱と魔力にぞくぞくして、体が震えるのを抑えられない。 ヤバいから、手を放して欲しい……! 震える手でグラスをテーブルに置いたら、チェイス室長の手がオレの肩からふわりと離れた。 良かった……! オレは密かに息を吐く。緊張しすぎて呼吸まで止めていたみたいだ。 「このグラスならルルシュが映えそうだ」 嬉しそうにグラスを電灯の明かりに透かしてみて、満足そうに頬笑むチェイス室長。ちょっと肩に手を置いたくらいで、オレが羞恥に悶えてるなんて、想像もしてないんだろうなぁ……。 「さぁ、冷めないうちに食事にしないか?」 「そうっすね!」 努めて明るい声で、自分の中の感情の昂ぶりをいなす。席についてグラスを手にすると、チェイス室長が早速ルルシュをグラスに注いでくれた。 「うわ……ピンク? 赤? 結構濃い色だ」 「ちょっとだけ飲んでごらん」 果汁を濃縮したようなとろりとした舌ざわりと濃厚な甘さで、香りまで甘い。意外と度数は高そうだけど、これならいくらでも飲めそうだ。 「なんか舌ざわりが特殊……」 「そう。なんと凍らせたルルシュを漬け込んで、さらには丁寧にすりつぶした果肉を裏ごししてピューレ状にしてあるそうだよ」 「手がかかってんなぁ。高価いんじゃないすか? この酒」 「まぁ、もちろん値は張るよね。今回はタダだけど」 「じゃあせっかくだから飲まなきゃ損っすね! めっちゃ美味いし!」 「あ、待って。ここからが面白いんだよ」 ぐいぐい飲もうかと思ったら、即止められた。 なんなんだ? と思ったら、チェイス室長は空中で氷を生成し、オレの飲みかけのルルシュの中に優しく投入する。

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