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第19話 【チェイス視点】ドアの向こうの声
深いため息が出た。
普段のミジェなら絶対に使わないだろう荒い言葉使いとあんた呼びに、ミジェの怒りが現れている。こんなエロいおっさんになんてもう敬語を使う価値もない、ということだったりしたら泣きたい。別に敬語はどうでもいいけれど、嫌われてしまったのが単純に悲しかった。
でもそれも仕方ない話だ。なんせそう思われるだけのことをしてしまっている。
それにしても、魔力が自身の気持ちに反応して他者に不埒な真似をするとは。これまで学んだ講義でも文献でも、そんな事例はなかった。
魔術で力の方向性を定めずとも、魔力はコントロールできるということなのだろうか。だとしたら、私は平時でも魔力をコントロールできるようになるべきだ。ミジェにこれ以上迷惑をかけたくない。
魔力で自分の足を触ったり、カーテンを揺らしたりできないかとやってみたが、何の反応も得られない。
当たり前だ。魔術なしでそう簡単に魔力が力を発揮できるわけがない。しかしミジェは確実に何かを感じているようだ。私は魔力は豊富で術を行使する力も強いが、魔力を見る力も、ましてや体感する力も持っていない。そんな私がどうやって訓練の効果を測れるというのだろうか。
「ん……っ」
「!!!?l
トイレのドアの向こうから思いがけず悩ましい声が聞こえてきて、私の心臓がバクン! と跳ねた。
え、今の……ミジェの、声……?
「ふ……ぁ、……っ」
ドアの前で固まっていたら、ミジェの吐息混じりの細い艶めかしい声が聞こえてくる。
これは、もしや。
聞いてはいけないと思うのに、全神経が耳に集中してしまう。バクバクと、心臓が早鐘のように打ち始めた。
ついさっきまでミジェは私の魔力に長時間嬲られていたのだ。首まで真っ赤になって、相当体が昂ぶっていた様子だった。もしやさっき、私のせいで立てない、と言っていたのは……。
その可能性に、私の喉は自然とゴクリと鳴った。
そういえば、ずっと背を丸めるようにして体を震わせていたではないか。
この扉の向こうで、ミジェが自慰をしているのかも知れないと思ったら、たまらない気持ちになった。
「なんで乳首ばっかり……っ」
そう言って目を潤ませ、真っ赤な顔で俺を睨むように見上げていたミジェ。
浅黒い肌にさした赤みが、汗で頬に張り付いたオレンジの髪が、震える声が艶めかしかった。さっき見たばかりのミジェの痴態が一気に脳裏を占領する。
私の魔力で体中をまさぐられ、乳首を摘まれて無理やり高められた体を、このドアのむこうで一人、慰めているというのか。
火照った顔で自身の中心を無心にしごくミジェを思い浮かべたら、もうダメだった。私が責任もってその中心を撫でさすり、誠心誠意可愛がって吐精へと導きたい。
「あっ……やっ、ぁ、なに……!?」
ドアの向こうで驚いた声が上がったが、その艶を含む声が余計に私の妄想を加速させた。
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