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第40話 ぎゅってして

「ミジェ……抱きしめても、いいだろうか」 囁くような声が頭上から降って来る。見上げたら、切なそうに目を細めているチェイス室長の表情が見えて、こっちまで切なくなった。 「うん……」 恥ずかしくなってチェイス室長の胸に顔を埋めたオレは、消え入るような声で答える。 そしたら、本当にオレが嫌がってないかを確かめるようにゆっくりと、オレを抱きしめる腕の力が強くなってくる。最終的にぎゅうっと抱きしめられて、隙間がないくらい二人の体がピッタリとくっつくと、チェイス室長は感無量って感じのため息を漏らした。 「幸せだ……」 「オレも!」 嬉しくて、こっちからもぎゅっと力を込める。チェイス室長の体温が、心音が、ダイレクトに伝わって来るのが嬉しい。チェイス室長の情熱的な魔力が五感全部を刺激してくる。 魔力と純粋な体感がない混ぜになって、幸福感がすごい。 「生身のチェイス室長……すごい……」 「え?」 「さっきさ、チェイス室長の魔力が毎日添い寝に来てくれたって言ったじゃん? 優しい魔力で一晩中抱きしめてくれててさ……オレ、ホントに嬉しかったんだ」 見上げたら、チェイス室長の深い緑の瞳があんまり綺麗で、オレは思わず口元が緩んでしまう。 「チェイス室長の魔力大好きだけど、でもやっぱり、生身の方がもっと好きだなぁ」 その瞬間、バッと体が離された。 「チェイス室長……?」 「すまない! もう自制心が限界だ! このままでは」 「オレたち、恋人同士じゃないの?」 オレの言葉に一瞬フリーズしたチェイス室長は「こっ、恋人で! 恋人でお願いします!」となぜか敬語になっている。 「オレ、恋人とならエッチな事するの、やぶさかじゃないんだけど」 ていうかむしろ、ここ数日で煽られまくった責任をとって欲しい。 「自制しなくていいから、もう一回、ぎゅってして」 両手を広げたら、チェイス室長の震える手がオレの方に伸びて来る。 「あ……っ」 その手が触れるより先に、オレの全身にお馴染みのエロい魔力が纏わりついてきた。 搔き抱かれ、見上げた瞬間に唇を奪われる。チェイス室長の濃厚な魔力が痺れるように甘い。その刺激の強さに思わず喘いだら、その唇の隙間を割ってチェイス室長の舌が侵入してきた。 「あ……ふ……ああっ……!」 チェイス室長の舌がオレの舌に絡み付いた途端、さっきから感じていた濃厚な魔力がまるで奔流のように体の中を巡っていくのを感じた。体内から魔力に侵されて、まるで媚薬のように全身の感覚が鋭敏になっていく。 舌を吸われ、口蓋の敏感なところを丁寧に丁寧に舐められると、その直接的な刺激と魔力による刺激が相俟ってあり得ないくらい気持ちいい。

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