46 / 46

第46話 幸せな朝

*** 「ミジェ、おはよう」 「おはよ」 爽やかな朝の光の中、チェイスが極上の笑みでオレを起こしてくれる。 「昨日も素敵だったよ」 チュ、と優しくおはようのキスをされる甘々な朝だ。 毎回思うけど、この世の幸せを凝縮したような笑顔だなぁ……。嬉しくて、ちょっと恥ずかしい。チェイスがこんなに恋人に甘い人だなんて想像した事もなかった。なんでこの人、恋人いなかったんだろう。 夜に無茶されるせいでめっきり朝に弱くなってしまったオレのために、毎朝文句も言わず二人分の朝飯を準備してくれる、この国の最高位に位置する稀代の魔術師とは思えない甲斐甲斐しさだ。 オレたちが初めて体を繋げてからひと月。 俺たちはチェイスの職場に程近い場所に、二人で暮らしている。 まぁ、アレだ。所謂同棲だ。 少しでも長く一緒にいたい、というチェイスの要望をオレがのんだ形だ。オレの仕事はどこでもできるし、ここは王宮近くで立地も最高にいいから文句はない。むしろ足が運びやすいからか個人で依頼してくれる人も増えて懐もあったかくなったし、広くて庭もあるこの家はある意味オレの理想の家だ。 オレの魔道具造りの腕とチェイスの魔法を融合させて防音、防臭、防犯対策万全のスペシャルハウスになってるから、日中からカンカン魔道具を叩いてても夜にどんだけチェイスがエロくてしつこくても、ご近所トラブルに発展しないのが特に素晴らしい。 なにより忙しいチェイスといつでも会えて、互いの仕事にアイディアを出し合ったり、他愛もない事を話して笑い合える空間があるのがありがたかった。 「じゃあ、行ってくるね。出来るだけ早く帰ってくるから」 そう言って、チェイスは行ってきますのキスをする。 朝はエロいキスはなし、という約束通り唇と唇を触れ合わせるだけの、可愛らしいキス。ちょっとだけ切なそうな顔をするチェイスからは、ぎゅうっと抱きしめるような穏やかで優しい魔力。そしてほっぺたや耳たぶを触っては、ハッとしたように離れていくちょっとエロさを含んだ魔力が感じられて、内心面白くて仕方ない。 真面目な顔して相変わらず毎朝、オレに触りたい気持ちと葛藤しているらしい。 魔力で触られまくるのが恥ずかしくてあんなに困ってたっていうのに、気持ちを確かめあって恋人になってしまえば、こんな風に葛藤してくれる事も、触れてくる魔力も、嬉しくて愛しいんだと知ってしまった。 魔力を体で感じるなんて厄介ばっかだと思ってたけど、それがきっかけでこんな幸福な毎日がおくれるなんて、ホントに想定外だ。 こんな幸せな朝が、ずっと続けばいい。 そう切実に願いながら、オレは今日も大切な恋人を送り出した。 終

ともだちにシェアしよう!