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1 花山高校 入学式

高校初日 朝 「んにゃ……」 「おはよう、結城(ゆうき)朝だよ」 「へ?」 ……。 ベッドの上で固まっていると 「アハハどうした、おはようのキスでもしてほしいの?」 と葵は言ってきた。 俺はさらに2秒ほど固まって 「ババババババ……バカなんじゃない、んなわけないだろ!!」 「アハハ結城面白すぎ」 腹を抱えて笑っているのは幼稚園からの幼馴染みであり隣の家に住んでいる米田葵(よねだ あおい) そして俺は栗山結城(くりやま ゆうき) 「ねぇ結城学校遅刻すっぞ」 時計を見ると7時半だった。 「それを早くいえ!!」 どうにか入学式の時間には間に合った。 てか間に合いすぎ。 8:45 「あー10時からだったわ」 「おい!!」 家から高校までは徒歩で30分。 チャリなら10分くらい。坂があるので歩きでいっかってことになった。 校門までは桜並木がありそこで時間まで過ごす。 「なぁ葵ん家は親くんの?」 「んー俺のことどうでもいいって思ってるから来ないんじゃないかな?」 「……ふーん、見たかったな」 「ざんねん~~ 兄貴にしか興味ないからあの人たちは」 切なく言う葵は中学生の卒業式を思い出した。 つい最近だけど、でも葵はこの切ない表情になる。 「まぁさ今回も結城ん家のカメラで俺たちのこと撮っておいてよ」 「もちのろーん」 「なにそれ アハハ」 こうやって葵と桜の下で笑えるのは最高だ。 そしてあっという間に時間はすぎて10時開会式になった。 相変わらず校長の話は長い、そして新入生代表を務めるのは米田葵だった。 なんたって成績優秀、スポーツもできるし顔は……イケメンというよりは可愛い系の分類。 たしか葵ん家の家族は全員モデルなんだよな。 可愛い系の分類だったから見放されてしまったのか。 今はお兄さんのほうに熱が入っているみたいだ。 【春の息吹が感じられる今日、私たちは花山高校に入学いたします。本日は私たちのために、このような盛大な式を挙行していただき誠にありがとうございます。新入生を代表してお礼申し上げます。…………以上をもちまして、新入生代表 米田葵の挨拶とさせていただきます】 丁寧なお辞儀をして壇上から降りた。 普通なら家族が動画を撮っているのに、俺の家族が総出になって録画してるからな。 葵との写真はアルバム50冊くらいある。 自慢じゃないけど、死ぬまで一緒にいたいのが本音。 式が終わりクラス分けの教室に入った。 残念ながら同じクラスにならず。 「あー珍しい、別れたな」 「な~中学3年間は同じクラスだったのにな」 「それな」 身長は同じくらいだけど葵のほうが顔小さいのむかつく。 「なに見てんだよ、キモ」 「ひど!!」 「てかあれじゃね俺たちずっと一緒にいすぎだからそろそろ別れろ的なやつだよ」 「自立しろってきなノリでいうなよ」 「えーでも逆によくここまで仲良しでいられたよな、俺たち」 と言いながら葵が遠ざかっていく。 やだ…………やだ。 「あ!! 新入生代表の米田だ、俺たちと同じクラスかよ、よろしく~~」 「おうよ!」 …………。 いいな葵は天才肌だから友達昔から多いし。 俺は別にぼっちでも全然平気だし…………。 って2週間経過。 あれ? 嘘…………俺本当に友達作れないんだけど。 昼休みになって友達同士で机をくっつけていた。 …………入れない。声かけずら。 すでにグループできてるし…………。葵いないの辛!! 校舎裏に1人向かっていると後ろから 「ぶはっ」 と声がしたので後ろを向くと葵がいた。 「どこまで行くのか教室出た辺りから見守ってたんだけどさ、いつもここで弁当食べてんの?」 「……悪いかよ」 じとーと睨むと 「なんだよ、ぼっち飯なら言えよ、すぐに来たのにさ」 え? なんそれ。。。 キュンってしたぞ今。 イケメン対応か!! くそ!! 「てかさいいのかよ、お友達ほっといて」 「え? 別によくね俺が誰と食おうとさ」 ……俺は今すぐにこいつに抱きつきたい。 「てか今日弁当作ったらさ指火傷したんだけど」 「まじかよ、大丈夫か??」 「ここ」 葵はなにを思ったのか絆創膏さえ貼っていない指にしゃぶりついた。 「おまっ……誰かに見られたらどうすんだよ」 と慌てた。 「こんな影のところに誰もこないよ、てか火傷は舐めねぇか、ハハ」 「まぁ俺たち的にはいつも通りだけど、いちをここは俺たちが知ってる土地じゃないんだからな!!」 「分かってる、分かってる」 葵の治療法には心臓ドキドキだけじゃ済まないんだからな!! 特に俺は。 下半身もぶち切れるところだったわ。 横から見ても相変わらずいい顔してるわ。 パン頬張ってるとことかさリスみたいで可愛いんだわ。 「あ、そうだ放課後の部活、たしか先輩のお披露目会だろ、一緒行こうぜ」 「だな~~てかお披露目会ってなんだよ」 「それな、俺たち鬼レベルだからな先輩に勝っちゃうかもな」 「んじゃ後で」 「おう!」 寂しいと思っていた昼休みも葵がいるだけで全然違う。 ……俺は葵一筋だから他の友人が欲しいってわけじゃないけど、俺も大人になるしかないか。 青い空を見つめた。

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