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ヨキと雪だるま
「ヨキ、どこまでいくの?」
雪利はヨキに聞いた。あっちの店のサンタを笑って、こっちのクリスマスツリーを眺めて、今度はそこの服屋でラッピングされたプレゼントのショーウィンドウを羨ましそうに眺める。
そうやってヨキとあちらこちらを見ながら、商店街を巡り歩いた。
「特に決めてないけど、雪利はどこか行きたいところ、ある?」
ショーウィンドウから顔を上げたヨキに見つめられて、雪利はドキッとした。キラキラした瞳はさらに輝き、何もかもが楽しそうにしている。
雪利も今を楽しんでいたはずなのに、なにが楽しいのか急にわからなくなった。
どこに行きたいか考えたところで、いつもどこにいても「つまらない」と思っていた。
とっさにどこに行きたいとも言えなくて、雪利は戸惑った。
つまらないのはこの街並みでも、ヨキでもない。それを楽しめない自分自身だ。
「雪利、もしかして疲れた?」
ヨキは雪利に向き直り、頬に手を当てた。親指が顔の輪郭をなぞるのがくすぐったい。
「少し、疲れたかも。そこの喫茶店に寄ろうか」
二人は近くの喫茶店に入った。カランと小気味良い音が鳴る。
窓際の席に座り、雪利はコーヒーを、ヨキはアイスフロートのついたメロンソーダを頼んだ。
「ねえ、ヨキ」
雪利は窓の外を眺めながらヨキに話しかけた。
「君、雪だるまだろ」
とても馬鹿馬鹿しい問いかけに、雪利はなんとなくヨキの方を見られなかった。
でも、どうしてもそう思えてしまった。突然現れて、真っ白の姿形て、少し冷たい手を繋いで、こんな寒い日にアイスフロートのメロンソーダだなんて。
「もし俺が雪だるまだったら、メロンソーダなんて飲んだら、緑色の雪だるまになっちゃうよ」
「そうだね」
こんな馬鹿げたこと、あるわけない。雪だるまが人間になるなんて。
雪利は自分にそう言い聞かせてみたけれど、不信感は募るばかりだった。
「ねえ、ヨキ。ヨキは雪だるまなんだろ」
会話も少なく、飲み物だけを飲むとさっさと喫茶店を後にした。喫茶店の中は暖房が効いていた。心なしか、ヨキは少し多めに汗をかいているような気がした。
二人は再び、大きなツリーの下に来ていた。あたりはすっかり日が落ちて、イルミネーションは幻想的に輝いていた。
「君が雪だるまでもいいんだ。だってそれでも、僕の手は冷たいから、君を溶かさないで済む。だろ」
雪利はヨキの手を握った。
「雪利」
ヨキが握り返すと、雪利は泣きたくなった。
人よりも冷たい手の自分より、さらに冷たい手だった。
「雪利はあたたかいよ」
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