軽くのぼせている俺は、マコトに凭れ掛かりながら、ぼんやりと温(ぬる)めの湯に浸かる。 　後ろから抱きかかえるように入浴しているマコトの顔は、俺の肩口に埋(うず)まる。 　ずぅん…という効果音がぴったり嵌まるほど、盛大に落ち込んでいるマコトの背中には〝反省〞という大きな重石が乗っていた。 　身体を芯から温め、じんわりと汗をかくのが目的だったはずの風呂が、ふしだらな空間へと変貌してしまったのは、偏(ひとえ)にマコトの悪戯のせいだからだ。 「ごめん……。悪化したら、オレのせいだよね。てか、絶対悪化するよな……」 　身体目的じゃないなんて、どの口が言ってるんだよって話だよね…と、しょんぼりと紡がれた声に、マコトの頭を後ろ手に撫でてやる。 「俺も薬効いて、調子乗ったから。お前のせいだけじゃねぇよ。てか、俺はお前が寝込むのが心配……」 　俺はそれなりに、料理も出来る。 　でも、マコトは専らコンビニ弁当か外食だった。 　熱が出てしんどい時に、買い物に出るのは、まず無理だろう。 「２、３日、家泊まれ」 　俺の発言に、マコトは肩の上から疑問符を投げる。 「伝染ってなかったらそれでいいけど、伝染ってたら俺が看病する」 　俺の看病はマコトにしか出来ないというのなら、逆もまた然りだ。 　マコトの看病は、俺だけの特権だ。 　幸い、俺の家には、鞍崎が買ってきてくれた冷却シートや多少の食料がある。 「それは嬉しいけど……、２人で共倒れになったらヤバくない？」 　直面する問題に、俺の髪に鼻先を突っ込んだマコトが、低く唸る。 「そん時はまた鞍崎に甘えればいいだろ」 　一度、甘えてしまえば、……あんな恥ずかしい姿を見られてしまえば、あとは野となれ山となれ、だ。 「格好つけたところで、いまさら守るプライドなんてねぇし。お前１人にして、不自由させる方が嫌なんだよ」 　ここまで赤裸々に話しても、マコトの反応は、まだ鈍い。 　俺の本音を引き出そうとしているのだろうと察し、腹を括った。 「はぁ。……寂しいから、帰んな」 　素直に告げた言葉に、マコトの嬉しそうな含み笑いが、俺の鼓膜を愛でた。 　予想通り、マコトは高熱を出し、丸一日、寝込むことになったのは言うまでもない。