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(――っえ?)
今……なんて……?
電車が到着する音がして、呆然と向こう岸のホームを見る。
そして、降りる人混みの中に、あの人を見つけた――
(あっ!ぁ、待って!!)
あの人はそのまま改札の方へ歩いていく。
さっきまでの揉みくちゃの疲れも忘れて、僕はあの人を追った。
急いで駅の外に出ると、以外とすぐそこにいたあの人。
一緒に帰っていた他の2人と楽しいそうに喋ってた。
(……サッカーボール持ってる…)
サッカー部だったんだぁ……なんて今さら気付く。
(一緒に喋ってる人たちもボール持ってるなぁ……同じ部活なんだ…)
……いぃなぁ…
しばらくぼーっとその光景を見ていたが、はっと気付く。
(ぅわ!!こんなにガン見とか僕完全に不審者じゃん!)
でも、もうちょっと……せめてあの人が駅から去るまでは……
僕は何気ないふうを装って近くの自販機へ歩いていく。
そして飲み物を選ぶ振りをしてそっと話し声を聞くことにした。
(……どうしよっ……ドキドキする……)
こんなに近くで見たのはいつぶりだろう。
あの人の笑い声が……姿が……数歩歩いたらそこいいる……
それだけで全身が熱くなり胸がキューっとする。
(僕……本当にあの人のことが好きなんだなぁ…)
改めて実感していると、あの人たちの話しが聞こえてくる。
「あぁー今日も疲れたぁー」
「これから塾とかまじやってらんねぇよ」
(お友だちAさんは今から塾なんだなぁ……部活もあったのにお疲れ様です…)
連れのお友だちは、2人いるのでAさんBさんって呼んで、そっと心のなかで相づちをうってみる。
どうしよう……凄く楽しい。
あの人はいつもこんな話をしてるんだろうか。
(心がほわほわするなぁ……)
にまにまと顔が緩むのがわかる。
「あーまじ代わってくれょー」
「ぅわっ!おま、引っ付くなって!!」
(ふふっ、仲良しだなぁー……)
羨ましぃなぁ……
僕だって話したい……もっともっと近づきたいよ……
グルグル、グルグル…その間にも会話は進み。
「ってかさぁー、あのトシの発言は無いわ!!」
「だなっ、監督キレてたぞー!」
(わゎっ、『トシ』さん何言っちゃったのかなぁ……)
「っ!うっせぇよ!!大体、あれはお前らが悪いんだろっ!?」
ケタケタとあの人をおちょくるAさんBさんと、そんなお二人をベシッと叩く『トシ』さん。
…………ん、『トシ』さん……?
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