(――――っつ！？！？！？) ぇ、『トシ』さんって……トシさんって…… (あの人の名前じゃんっ！！) ぶわぁっと全身の血が駆け回る。 あの人の名前知っちゃった！ (どうしよ、どうしよ！！) わーーーっ！！ その後も数分話して、３人は別れて帰って行った。 残念ながら、帰る方向は正反対。 それでも、名前を知れて、こんなに近くで話しを聞けた僕はほわほわしながら家に帰った。 (先生に感謝しなきゃなっ!!) ありえない量だったけど、居残りできて良かった。 それからというもの、僕は図書室などで勉強しながら、帰りはあの時間帯の電車に乗るようになった。 揉みくちゃは大変だけど、『トシ』さんに会えるのならどってことない。 あの日、あの人の名前を聞いてから、僕も『トシ』さんって呼ぶようになった。 今日の朝のトシさんはかなり眠そうだったなぁ…帰りはどうかなぁ… あ！今日は機嫌いいっぽい。 今日は何の話してるんだろう… 前よりずっと近くにいるトシさんに、僕の頭の中は毎日トシさんでいっぱいだった。 そんなある日。 いつものように揉みくちゃ電車に乗ってトシさんたちを見つけた僕。 （あれ？ 今日AさんとBさんの様子が変だ） いつもよりそわそわしてるような…？ トシさんもそう思っているらしく、さっきから「お前ら何隠してんの？」と2人を睨んでいる。 僕は、なんだかとても嫌な予感がした。 そして、その予感は当たることとなる。 「あ！いたいた」 「お、本当だ！おーい、こっちこっち！」 AさんとBさんが誰かを呼んでいる。 その声の先に 2人の女の子がいた。 「ほらっ、来たよ！がんばりな！」 1人の子はもう1人の子を励ましている。 それを見れば、誰だって分かる。 今からあの子は、トシさんに告白するんだって。