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足は、もうちゃんと動いてくれて 僕は、茫然と駅のベンチに座った。 (僕、何をしてたんだろう……) 夢なんて、何一つ無くて。 ただ先生や両親に勧められた高校を受験しようとしてて。 授業中や学校の行き帰り、些細な時間でさえトシさんのことばかりを考えていて…… でも、トシさんは 『俺さ、サッカー選手になりたいのな』 夢も、決まってて。 『いま行きたい高校あんだよね。サッカーすっげぇ強いの』 高校も、自分で決めてて。 スポーツ推薦だって、先生たちに頼んで、掴み取ってて。 僕と、何一つ違ってて。 (馬鹿だ……) 僕が毎日トシさんのことを考えてる時に、トシさんは夢のことを考えてたんだ。 毎日眠そうにしてて、あくびをしてて トシさんは夢に向かって努力をしてたんだ。 (自分がっ、恥ずかしいなぁ……っ) ホロリと、涙が落ちた。 僕が告白してても、きっと同じことを言われていたと思う。 だから僕も、今ふられたのと同じだ。 (いや、僕よりあの子のがずっとすごいよ) だって勇気だして告白したんだから。 トシさんは、僕が思ってるよりもずっとずっと遠くにいた。 夢だって無くて、何にも努力してない僕は、トシさんの隣になんか並べない。 それでも、僕はトシさんが大好きだった。 (もう……ちょっと、だけっ) もうちょっとだけ、泣いたら、帰ろう。 ベンチに座って静かに泣いてる僕を 騒がしい駅が隠してくれてるような気がした。

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