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第46話 番になる※

 作ったような甘味の中、ちょっと薬っぽい苦みも感じる液体を飲み干して数分。即効性って謳い文句が嘘じゃないって実感するくらいあっという間に体がウズウズしてきた。 「オーナー……」  わかった、って低く答えたオーナーの指が僕のバスローブの紐を解く。あっという間に裸になってしまって、しかももう既にそこは勃ち上がって震えてるのが酷く恥ずかしいんだけどそんな事考えてる暇もない。体全部性感帯になっちゃったんじゃなかって感じでただバスローブが肌の上から滑り落ちる感触だけでも小さく声が出ちゃった。  ぽす、っと頭が枕の上に落ちて上からオーナーの唇が降ってくる。  額、頬、首筋、耳……じれったくて体を捩るとようやく唇が重なる。僕の薄っぺらな舌を引きずり出して、オーナーの口の中で甘噛みされたり吸われたり。今度はオーナーの厚めな舌が僕の口の中に入って来て上顎を擦ったり舌を絡め合わせたり。  その度に体がびくついてオーナーのバスローブをぎゅう、って握りしめた。 「怖いか?」  ぬる、っとした液体を纏った指が後孔に当たってる。 「ん、怖く……ない……」  推しの為に運命を捻じ曲げてここまで来た僕ですよ!今更怖いなんてあるわけないでしょ。……本当は未知の領域でちょっと怖いんだけど、でもオーナーには今日まで散々後ろ慣らしてもらうのに色んな痴態を見せて来たし。 「だから、早く……」  早くしてくれないと薬効きすぎてうなじ噛む前に意識ぶっとんじゃうかも知れないでしょ。  少しだけ震えてる体はオーナーが怖いとか、この先の行為が怖いとかじゃなくて、中途半端な刺激だけで足りなくて震えてるんだよ。そう思ってオーナーをじっと見つめる。  夕焼け色の瞳が今日は燃え盛る炎みたい。 「あ……ッ」  つぷ、と指が1本後ろに入って来る。  散々慣らして僕の良い所なんかとっくに知り尽くしてるオーナーの指が性急な動きで中を掻き回して来た。2本目も、3本目も、もうすぐ入れられるくらい慣らした体だ。今日の目的は番契約を結ぶことだから、いつもみたいに泣いて懇願するまでイかせてもらえない、とか入れて貰えないって事もなくしばらく中でバラバラに動いてた指はあっさりと出て行ってしまって薬で発情して疼く体には物足りない。 「後ろ向け」  今コマンドを使ったら僕が気絶しちゃうからだろう。オーナーはコマンドを使わずに言う。  本当はコマンドを使って欲しい。コマンドに従って、それで褒めてもらったらものすごく気持ち良いだろう。だけど今日の目的の為には今は少しだけ我慢だ。だってコマンドを使わなくったってきっとオーナーは褒めてくれるから。  おずおずとオーナーに背中を向ける。  僕の背中にあった継母からの虐待の痕はシーラ姉さんの治癒でほとんどが消えた。聖女の治癒は死んだ直後の人なら復活させられるくらい強力なんだって。しかもシーラ姉さんは歴代最強って言われるくらい魔力も高かったから古い傷痕も治ってしまったんだ。  ただお母さんが僕につけた紋様とそこを焼いた継母から受けた火傷の痕は消えなかったけど。聖女の魔力で消えなかったそれがやっぱり僕が魔王化する原因の1つだったんだと思う。今でもそこには感覚がないけど長年付き合ってきた傷痕だからこれからも付き合っていくだけだ。  傷だらけだった僕の綺麗になった背中に強く吸い付いて痕をつけてるらしいオーナーが最後に僕の首輪にキスしてきた。 「……本当に良いんだな」 「この先一緒にいるのはオーナーじゃないと嫌だ」  火照って昂った体がオーナーを欲しがって、ふわふわとハーブの匂いを撒き散らしてる。早く、早く、って思わず尻をオーナーのそこに擦りつけてちょっとびっくりした。 「勃ってるね」  ガチガチに固いものが尻に当たって思わずゴクリと喉を鳴らしてしまった。  は、と熱い吐息が首筋にかかる。 「今すぐにでもここに入れて思いっ切り揺さぶってやりたいと思ってるんだ」  だから煽るな、って尻から離れてしまうのが寂しい。  僕だってもう頭の中ぐちゃぐちゃでこうして普通に喋ってるのも限界なのに、一番欲しいものを取り上げるなんて酷い!  っていうか、薬まで飲んだんだから早くして。何も考えられなくなるくらいぐちゃぐちゃにして、オーナーで一杯にして欲しい。 「……本当に良いんだな。噛んだらもう後戻り出来ない」 「良いよ……。オーナーだからずっと一緒にいたいって言ってるでしょ」  好きだから。命をかける程大好きだから。  そう言った瞬間、ぼとりと首輪が布団に落ちて後孔に熱くて硬いものが当たった。  ぐ、っと押し込まれる感覚に思わずのけぞるけど、背中に圧し掛かられてゆっくりゆっくり熱くて硬いオーナーのが中を進んでいく。 「あ、ぅ……、あ、あ……」  時折ゆる、っと前後しながら奥へ奥へ入り込んでいくそれを僕の中もまるで引き込むみたいに蠢いて受け入れてる。  今日まで丁寧に慣らしてもらったおかげか薬を使ったからか初めてにしては痛みもなくてただただ熱い。お腹の奥とか腰の辺りとかゾクゾクしてがくん、って落ちそうになる体をオーナーの腕が支えてくれて、腰だけ何とか上げてる状態でぴったりと体が重なった。 「熱い……」 「痛みは?」 「ない……、ん……っ気持ち、い……」  一応潤滑剤も使ったんだろうけど、僕の中から溢れるくらい体液が出て太腿から垂れてくる。気持ち良くてぞわぞわして、早く動いてもっと奥を突いて欲しくて腰がくねってしまう。  微かに息を飲んだオーナーの舌がべろりとうなじを舐める。 「あん……っ」  噛まれるんだ、って思ったら体が勝手に反応して力が入っちゃった所為でオーナーのペニスを締め付けてしまった。熱い吐息を吐いたオーナーから、これが最後だって言われる。 「本当に俺で良いんだな」 「オーナーじゃなきゃやだ……!」  たった1枚の挿絵で前世から好きだった最推し。出番はたったの数ページ。勇者と聖騎士を誕生させる為に命を落とす筈だった人。きっとほとんどの読者はオーナーの存在なんてあんまり気にも留めないだろう。ティールとギフトの親みたいな兄みたいな存在だってだけでさらりとしか触れられなかったキャラだから。  でもこの世界にやって来て実際にオーナーに出会って、面倒見が良くて実はちょっと過保護で、伝説級って言われるくらい強くて。笑うと太陽みたいに明るくて怒ると怖くて、とっても優しい人だって知った。  物語のモブじゃない、血の通った人間。推しだったから捜し当てたけど、側にいてもっともっと好きになったから。  他の誰でもない、オーナーだから側にいたい。  Ω×Subんて厄介な体だけどそのおかげでオーナーと番えるならこの体で良かったって――諦めなくて良かったって心から思えるから。 「もう二度と離してやれねえからな……!」  離れるつもりなんて欠片もない、って言葉にする前に。 「ひ……、あぁぁぁぁぁぁぁ……ッ!!!!」  うなじに強い痛みが走った。脳髄まで揺さぶられるみたいな激しい衝撃と同時に入ったまま動かなかったオーナーが遠慮の欠片もなく腰を動かし始める。うなじには歯が食い込んだままだ。 「ん!あ!あ、ひっ、ああ!」  下からはグチュグチュと音が聞こえて、耳元ではうなじを噛んだままのオーナーからフーフーと獰猛な息遣いが聞こえる。血と噛みついてる所為で飲み込めないオーナーの唾液が首筋から滴って落ちて染みを作っていく。  頭の中がぐらんぐらんして何も考えられない。  ただ気持ち良い。噛まれている痛みも確かにある筈なのに気持ちが良い事しかわからない。薬を使わずにいつもみたいにコマンドを使いながらだったら、もうとっくにへろへろで気を失ってたかも知れないくらい気持ち良い。 「や、あ、あ、きもちぃ……!んん!」  突き立てられた歯が離れて、血が溢れるうなじに舌が這う。 「一度中に出す」 「ん……っ」  こくこく頷くのが精一杯。  ただでさえ大きなオーナーのがぐん、と一回り大きくなったような感覚すらして口から苦し気な息が漏れたけど、腰を掴んだ大きな手が無意識に逃げようとした僕を引き寄せてガツガツと奥を突いてくる。 「ひ、やぁ!あ!あ、あ……!!」  ズルズルと抜け出して行っては勢いよく中を抉る剛直に内臓ごと押し上げられてしまいそうで必死でシーツに掴まった。じゃないとどこかに意識が飛んで行ってしまいそうだったから。  僕が発情した状態でオーナーが中でイくまでは意識を保っておかないと番契約は成立しないし。  慣らしながら指で捜し当ててた僕の良い所ばっかりを狙ってゴリゴリと擦って来るからもうたまらない。早くイってくれないと僕が気絶しちゃいそう。 「あ、だめ、イきそう……!」 「もう少し待て……!」 「や、そんな事言ったって……!ああっ!!」  ぎゅっとペニスを握られて腰がびくんと跳ねあがってしまった。  どのくらいそうしてたかもうわからない。もしかしたらそんなに時間は経ってなかったのかも知れないけど、オーナーが息を詰める声がしてぷくりと根元が膨らんだのがわかった。αは確実にΩに種付けする為にイく時は根元に瘤が出来るって本当だったんだ。  瘤に気を取られてる間にじわじわと中に何かが広がっていく。 「ウル、『イけ(Cum)』」  突然のコマンドに体が大袈裟なくらい飛び跳ねて。 「ひあぁ――――ッ!!!!」  最後に『良い子だ(Goodboy)』って声と共に頭を撫でられた気がした。  

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