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プロローグ①
『ゴメンね私、好きな人が出来たの───…』
恋愛ドラマなんかにありがちな台詞を叩き付けられ、ズシリと頭ん中に衝撃が走る。
「そん、な…なんでっ…」
「なんでって…節 くんて、まず男としてちょっと頼りないっていうか…」
優柔不断で、何をするにも私任せだし。
優しいけど男らしさには欠け、雄味がちょっと足りないだのなんだのと…
求めた回答に対し恋人…であるアリサちゃんは。
ガッツリと不満を上乗せし、突っ返してくれる。
いや…アリサちゃんのそういう、何事も包み隠さず直球で。ズバッと物言う切れ味バツグンな性格も、好きなんだけどさ。
言われた男としては、ちょっとイタイよね…。
「節くんは温厚で性格も良いし。な~んか地味ではあるけど、顔も綺麗目で悪くはないでしょ?でも私の中ではね、男らしさってところが…最も押さえておきたい重要なスキルだと思ってるから。」
んん?スキルって────…さっきまで別れ話だったはずなのに。段々と路線を逸れ、なんというか…説教タイムみたいなことになってきて。
とはいえ彼女の言う通り、イマドキの控えめ草食系を自負するオレは。反論するだけの甲斐性があるわけでも無く…情けないかな肩をすくませ、黙って頷くしかなかった。
アリサちゃんとの出会いは、短大生時代から今日までの付き合い。
なんだかんだ交際して2年くらいかなぁ…卒業後も特に喧嘩とかも無く。円満にも、付き合いは続いていたハズなんだけどね…。
就活に苦戦したオレは、フリーターをしながら半年程をやり過ごし。つい先日受けた会社の内定を、どうにかゲットしたばっかだった。
コレで収入面でも少しは安定するだろうし。
いずれはアリサちゃんとの結婚とかも視野に入れて…
早合点にも、明るい未来を想像しちゃったりしてたんだけど───…
「す、好きな人って…」
まさか、大学時代からアリサちゃんのことを狙ってたアイツとか…?
それとも…アリサちゃんは既に社会人になってるし、オレには勿体ないくらい美人でモテるから。職場でもきっと、同僚や上司から引く手あまただろうし。
もしかしたら、オレの知らない所でオフィスラブなんかに発展しちゃってたりなんかしてるのかも…
あれやこれやと思い当たる展開を想像しては、泣きそうになるオレに。アリサちゃんは、オレの想像を遥かに凌駕するような、衝撃的な答えを…
思いっきりの変化球で以て、ブン投げてくるのであった。
「私の好きな彼は────…」
ゴクリと唾を飲み込み、身構える。
「それはね、」
“ルーファス様よ────…”
………──────ん?
「る、るーふぁす…さま?」
アレ…?そんな珍しい名前のヒト、知り合いにいたっけかなぁ…と。予想外過ぎる展開により、オレの頭は完全フリーズする。
しかし彼女は、戸惑うオレに構うことなく続けた。
「そうなのっ!ルーファス様…彼こそが、まさに私の追い求めた…理想にして究極のナイト様なのよ!」
キャー言っちゃった~!!…だなんて。
未だかつて見たことない、超絶ハイテンションで捲し立てるアリサちゃんに…思わず立ち尽くすオレ。
彼女は興奮さながら、更にその饒舌ぶりを存分に発揮していく。
「今や時代は、肉食女子だのなんだのって言われるけどね…。やっぱり女の子は強い男に守られてこその生き物だと思うの!!」
ごく自然な振る舞いで女性をリードし…甘いマスクでいつも優しく微笑み掛けてくれる。
だからと言って、ナヨナヨした優男ではダメ!
厳しい修練を重ね、鍛え抜かれた肉体を駆使し…いざと言う時には身を呈し守ってくれる、強さと勇敢さが。
アリサちゃんが求める理想の男性像に、必要不可欠…なのだそうな。
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