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世界はセツ達によって護られ、随分と平和にはなったけれど。 今尚、反発する魔族は後を経たないし。 結界の監視や魔物の討伐、他にもセツ達や陛下のことを善しとしない輩だって…少なからず存在している。 だからこそ、僕がこうして呼ばれたんだろうし。 もし彼らに仇なす者があるならば… 僕はこの命を賭けてでも、護り抜く覚悟があるんだ。 (女神…僕にとっては、セツがそうなんだよ。) 幼い頃からの初恋を。 まだまだ忘れることは、出来そうにない。 だって僕を助けてくれた時のセツは、本当に綺麗で優しくて… それ以上の人なんて。 この世に存在するわけがないんだから。 セツの隣で、彼を愛おしそうに支えるルーファス様には。騎士としても男としても、到底敵わないだろうけど。 せめて対等に、同じ場所に立つことが出来れば。 いつかは───── 「ティコ?」 「あ…ごめんごめん。」 無意識に立ち止まってしまった僕を、セイラが不思議そうに見上げており。慌てて前を向く。 僕がセツの方を見ていたことに気付いたのか。 セイラは首を傾げながら僕と視線の先とを、何度も見比べていたが… 「セイラはさ、セツとルーファス様が好き?」 「?…うん、だいすき!」 唐突な質問に一瞬止まってしまっても。 すぐ頷いてみせた笑顔は、すごく眩しくて。  幼い仕草に、懐かしさが込み上げる。 「ティコは?ママとパパ、すき?」 「えっ…」 子どもは純粋だ。 だからこれは、ただのおうむ返し。 深い意味なんて…ないんだろうけど。 少しだけ、ほんの少しだけ覚えてしまった後ろめたさに。僕は言葉を詰まらせてしまった。 途端にセイラが表情を曇らせてしまうものだから…なるべく平常心に努め、笑ってみせる。 「僕も…セツとルーファス様、勿論セイラのことも大好きだよ。」 「ほんと?ティコ、わたしのことすき?」 何度も聞き返すセイラに、僕もきちんと応える。 (セツが守ってくれたもの…今度は僕が守ってみせるよ。) そのために俺は、騎士になったんだから。 「行こう、セイラ!キミが向かう場所なら、何処へでもお供するよ。」 「…うん!」 次の神子が召される時まで。 僕はこの命在る限り、セツの意思をずっと。 守護していくと、この胸に誓うから。 だって貴方は、僕の─────… …fin.

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