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⑩
世界はセツ達によって護られ、随分と平和にはなったけれど。
今尚、反発する魔族は後を経たないし。
結界の監視や魔物の討伐、他にもセツ達や陛下のことを善しとしない輩だって…少なからず存在している。
だからこそ、僕がこうして呼ばれたんだろうし。
もし彼らに仇なす者があるならば…
僕はこの命を賭けてでも、護り抜く覚悟があるんだ。
(女神…僕にとっては、セツがそうなんだよ。)
幼い頃からの初恋を。
まだまだ忘れることは、出来そうにない。
だって僕を助けてくれた時のセツは、本当に綺麗で優しくて…
それ以上の人なんて。
この世に存在するわけがないんだから。
セツの隣で、彼を愛おしそうに支えるルーファス様には。騎士としても男としても、到底敵わないだろうけど。
せめて対等に、同じ場所に立つことが出来れば。
いつかは─────
「ティコ?」
「あ…ごめんごめん。」
無意識に立ち止まってしまった僕を、セイラが不思議そうに見上げており。慌てて前を向く。
僕がセツの方を見ていたことに気付いたのか。
セイラは首を傾げながら僕と視線の先とを、何度も見比べていたが…
「セイラはさ、セツとルーファス様が好き?」
「?…うん、だいすき!」
唐突な質問に一瞬止まってしまっても。
すぐ頷いてみせた笑顔は、すごく眩しくて。
幼い仕草に、懐かしさが込み上げる。
「ティコは?ママとパパ、すき?」
「えっ…」
子どもは純粋だ。
だからこれは、ただのおうむ返し。
深い意味なんて…ないんだろうけど。
少しだけ、ほんの少しだけ覚えてしまった後ろめたさに。僕は言葉を詰まらせてしまった。
途端にセイラが表情を曇らせてしまうものだから…なるべく平常心に努め、笑ってみせる。
「僕も…セツとルーファス様、勿論セイラのことも大好きだよ。」
「ほんと?ティコ、わたしのことすき?」
何度も聞き返すセイラに、僕もきちんと応える。
(セツが守ってくれたもの…今度は僕が守ってみせるよ。)
そのために俺は、騎士になったんだから。
「行こう、セイラ!キミが向かう場所なら、何処へでもお供するよ。」
「…うん!」
次の神子が召される時まで。
僕はこの命在る限り、セツの意思をずっと。
守護していくと、この胸に誓うから。
だって貴方は、僕の─────…
…fin.
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