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⑨
「しかし3人目とは…更にここも、賑やかになりそうですね。」
「はは、セイラもルイも元気なんで…毎日ドタバタしてますよ。」
オリバーさんが微笑ましげに告げると、セツもセイラを撫でながら苦笑いして。
「気付いたら3人目でしょう、セツもルーも頑張るよねぇ~。」
「ばっ…子どもの前で何言ってんだよ、ロロ…」
ニヤニヤするロロさんに対し。
ジーナさんは呆れた様子で、それを窘める。
そんなふたりの遣り取りを、俺がきょとんとしながら眺めていると。
ロロさんの台詞に赤面して、しどろもどろになるセツに代わり…ルーファス様が真顔で口を開いた。
「セイラが…妹が欲しいと言っていたのでな。セツには負担を掛けてしまうが…セツとの子ならば、私は何人いても大歓迎だから。」
「ちょっとちょっと…!ルーってば、オレに何人産ませる気だよ!」
さらりと凄いことを言ってのけるルーファス様に。
今度はセツが頭を抱えていたけれど。
ふたりとも子ども好きだし。
この様子だと、満更でもないように思えた。
「ママ~、あそんできてもいーい?」
久し振りの全員集合で、大人達が話に盛り上がっていると。お菓子を食べて満足したセイラが、セツを見上げてきて。
「もうお腹いっぱい?あんまり遠くに行っちゃダメだからね?」
「は~い!」
セイラの口元を丁寧に拭きながら告げる様は…思い描いた、理想の母親像そのもので。
ちょっとだけ…羨ましくも思いながら、僕は席を立つ。
「ならば僕が、お供しますよ。」
「ティコ!いーの?わたしといっしょにあそんでくれる?」
一礼して手を差し出すと、小さなお姫様は大喜びで手を重ねてきて。
「ふふ、早速ティコの初任務だね~。」
よろしくねと、セツ達に見送られ。
セイラが急かすよう走り出す。
「セイラ、あまり急ぐと危ないよ?」
騎士のエスコートが気に入ってくれたようで、鼻歌混じりに浮かれるセイラは。
「わたしが神子で、ティコは守護騎士さまね~。これからふたりで、えんせいにいくのよ!」
前触れもなくごっこ遊びが始まり、思わず笑みが零れてしまう。
「それでは僕が、神子セイラの剣となり盾となり…必ずや貴女を守護してみせましょう。」
孤児院でも流行っていた遊びを思い出し。
それっぽい台詞で返せば、セイラは満足そうに微笑んで。僕の手を引いてまた走り出す。
ちらりと振り返れば。セツは愛する人と共に、時折こちらを気に掛けながら。
かつての盟友達と思い出を分かち合い…
楽しそうに笑っていた。
(僕も幸せだよ、セツ。)
貴方と出会い、この命を救われ。
親もいない俺が大きな夢を抱き、叶えて。
こうして今、此処に在ることが…。
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