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―終りを告げる今日―
その瞬間、本能的に危険を感じると。とっさにフェンスの方へと力任せに突飛した。
『俺に触るなっ!!』
突き飛ばすとそのまま声を荒らげて怒鳴った。
「消えろ、俺に近づくな! とっとと失せろ!」
感情を剥き出しにして怒鳴り散らした。 男子生徒は俺の素っ気無い態度を見て、つまら無さそうな顔を浮かべると直ぐに傍から離れた。
「――まぁ、いいさ。じゃあな、死に損ない」
そう言って後ろ向きで片方の手を振ると、非常階段の入り口に向かってそのまま去って行った。俺は男子生徒の姿を目で追うと、屋上で一人無言で立ち尽くした。
「……何なんだよアイツ?」
得体のしれない相手に酷く憤りを感じると、自分の頭を片手で掻きむしった。風が冷たく俺の体を吹き抜ける頃に、夕日が沈んだ空を一人何気なく見上げた。
全てを終らすと自分で決めた今日に。 俺は名前も知らない男に自分の計画を邪魔されて、あげくの果てには『死に損ない』の汚名まで、まんまと着せられた。
俺はやりきれない気持ちで一杯になり。今日と言う一日を、その日は普段通りにやり過ごした。俺の傷口を開いたあの男をあの後、忘れられなく頭の片隅にずっと漂っていた。
あの時、あいつの黒い瞳の奥に映っていたのは紛れもなく、俺自身の漆黒の闇だったのかも知れない…――。
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