22 / 121
―醒めない悪夢―
『ああっ、クソッ! ちくしょうっ……!!』
猛烈な吐き気に自分の苛立ちが募ってくる。怒りを露わにした声で唇をぎゅっと噛むと全身をガタガタと震わせた。
急に呼吸が苦しくなり。息をするのが辛くなると自分の長年の『病』でもあるうちの一つの症状。自律神経失調症の症状が突如、自分を襲った。
俺はパニックになりながらも必死で床から立ち上がると、ふらふらした足取りで机に向かった。そして、手探りである物を探した。
急に襲ってきたこの症状を抑えようと、錠剤が入った薬の小瓶を必死に探した。だが、なかなか探している物が見つからずに。一人で部屋の中で焦った。
「何で無いんだ…――!?」
呼吸が段々と息苦しくなってくると、パニックの症状もピークに達した。大きな目眩と立ち眩みに急に襲われると、今度は意識が遠退き出した。
胸が苦しくなって、胸元を鷲掴みして苦しそうな顔で前屈みになる。そして息が出来ない魚みたいに必死に呼吸をした。
「はぁはぁ、だっ、だれか……!」
必死に声を出して助けを呼んだ。迫りくる死の影が近付いてくるのが分かる。一人、部屋の中で微かな声で助けを呼び続けた。
「た、助け…て…――」
死にそうな声で必死に呼ぶと、急に視界がグルグルと回り始めた。そして、途切れ途切れにしていた息も完全に呼吸が止まった。その瞬間、自分の意識を失うと部屋の真ん中でバタンと床の上に倒れた。
俺の部屋から大きな物音がすると、居間にいた祖父と祖母がその音に気がつき。下の階から直ぐに二階へと駆けつけた。
『貴也っ!?』
『貴也君…――!』
二人は慌てて部屋の中に入ってくると、床の上に倒れてる俺を発見して大きな声を上げた。そして酷く慌てた様子で祖父が必死に声を掛けてきた。そして、床から体を起こすと自分の腕に抱き抱えて名前を呼び続けた。
「ああ、貴方どうしましょう……!?」
「落ち着け、今直ぐ救急車を呼ぶんだ!」
「はい…――!」
祖母は気が動転しながら携帯電話を手に持ち、慌ただしい様子で救急車を呼んだ。間もなくすると救急車が家の前に到着した。俺は完全に意識がないまま担架に乗せられてそのまま病院へと緊急搬送された。
――真っ暗なトンネルの中で、俺の意識は何も無い宙を漂っていた。それはまるで自分が死んだようだった。
先も見えない、ただ長いトンネルの闇が見えた。その瞬間、自分が死んだと錯覚した。
「嘘だろ。俺、死んだのか……?」
「冗談だろ! なあ、誰か冗談って言ってくれよ!」
「誰か居ないのか!?」
「誰かっ!!」
暗闇の中で必死になって声を出した。でも、其処には誰も居なかった。ただ、闇だけが存在した。不安と恐怖と絶望に大声で叫んだ。
『なあ、誰か返事をしてくれよ!』
『誰か嘘だって言ってくれ、誰かぁっ!!』
必死になって叫ぶと、藻掻くように暗闇の中を素足で走った。先が見えないトンネルをひたすら走った。まるで何かから逃れるように、ただ光が見える入口を目指した。
迫りくる恐怖が倍増する。そして、背後から無数の手が伸びて来ると、それは俺の手足を掴もうとした。
『嫌だ、来るな! やめろ、来るな……!』
無我夢中で走っていると其処で光りが現れた。その瞬間、俺は光りが射し込む方と飛び込んだ。
ともだちにシェアしよう!