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―醒めない悪夢―

――それは不思議な夢だった。あの時、病院に運び込まれた後の記憶は一切覚えてなかった。そして目を覚ました時には病室のベッドで眠っていた。 「っ、ここは…――!?」 視界に白い天井が目に入ると、俺は両目から涙を流した。怖いものに追いかけられた子供のように身体が震えて、顔から涙と冷や汗が出た。    祖父と祖母は俺の傍らで、心配そうな顔で覗き込んでいた。二人は悲しそうな表情で見てくると、心配そうに声を掛けてきた。 「貴也………!」 「貴也君…――!」 「っ……おじぃちゃん、おばあちゃん……」    傍に二人の顔が見えると急に安心した。 「ああ、良かった……。お前が目を覚まして、本当に良かった…――」  祖父が心配そうな声で話すと、隣にいた祖母が優しく俺に微笑んだ。 「貴也君、怖い夢を見たのね。でも、もう大丈夫よ。私達が傍に居るから。今は安静にして、眠りなさい」 そう言って前髪を手で撫ぜると、右手をギュッと握ってくれた。祖母の手のひらは温かった。その優しい温もりに包まれたら、さっきの恐怖と混乱した時の気持ちが段々と柔らいで行くの感じた。 俺は虚ろな瞳で祖母の手を握り返した。そして、『ありがとう』と小さな声で言うと、その後また意識を失うように眠りついた。  発見と通報が早かったので、脳へのダメージも 無く。俺は二日ほど、医師から検査を受けてから病院を退院した。 ――その日をきっかけに、さらに薬の量も増えた。ついでに飲む薬の種類も増えた。さらに自律神経失調症の症状を抑える薬も、今まで飲む回数と量を減らしていたが、毎日飲むようになり。精神科と内科に通う回数とカウンセリングを受ける回数も増えた。  

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