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―虚無の嵐―

  「じゃあな、死に損ない」  俺の脳裏からはあの男が言った言葉が、頭から ずっと離れなかった。  あの日は自分に覚悟を決めて、自殺を図ろうとしていたのに。それを突然、現れたアイツに邪魔されて。さらにの汚名まで俺は着せられた。  俺を死に損ないにさせたのはだ――。  夕暮れに沈んだ街の中を、重たい足取りで呆然トボトボと歩いた。呆然と歩いてると、すれ違い際に自分の肩に相手の肩がぶつかった。 向こうからぶつかってきた年配の男は、俺に一言も謝らずに舌打ちをすると直ぐにそそくさと通り過ぎて行った。俺はその場で自分の左肩を何気に摩った。でも、摩っても実際に肩が痛いのか痛くないのか、とっくの昔に死んだ俺の心はその感覚が麻痺していて実際は分からなかった。左肩を手で摩り終わるとその場を離れるように、いつもの足取りで再び歩き出した。 夕陽に溶け込んだ街並を乾いた気持ちで、俯いた顔で歩いた。街からは、複雑に交差した絡み合う雑音が耳に聞こえた。車道側からは、車が何台も行き交っていた。 俺の近くでは、誰かが鳴らす車のクラクションの音が仕切りに聞こえた。街灯の下では誰かが店に呼び込む声も聞こえた。 道を歩けばすれ違い際に女性達の楽しそうに話す会話も聞こえた。前からは携帯電話を片手に、誰かと電話しながら歩く男性ともはすれ違った。 街は人々の声と雑音に溶け込んでいた。 俺はその中を一人、焦燥感が漂った乾いた気持ちで人混みの中を紛れながら歩いた。 大きな交差点の前で信号機が赤から青に切り替わる一時の間。俺は、人々の群れに紛れながらその場に佇んだ。 自分の視界には車が何台も走りながら慌ただしく横を通り過ぎて行った。ぼんやりしていると不意に呟いた。

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