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―虚無の嵐―

 自分の胸をいきなり押し潰すような虚無の嵐が突如、襲った。額から不意に汗が滲み出た。動悸息切れに近い感情が胸を苦しく締めつけるとその場で呼吸をするのが苦しくなった。 発作に近い症状に煽られながらも、俺は1人でその症状と必死に戦っていた。胸を手で押さえながら前屈みになり、苦悶の表情を浮かべた。  俺の隣にいる見知らぬ他人は横目で見てきて、何かを言いたげな表情で見てきた。周りも横目でチラチラと見てきた。はたから見れば、ただの辛そうにしている人だ。だけど、本当に辛いんだ。呼吸をするのもやっとなくらいだ。 俺の症状を知らない人は何も知らないでただ平然と『大丈夫と?』とぬかして聞いてくる。こんな苦しみが大丈夫だったら、今頃は俺だって苦労はしないさ。  だったらお前が代われ!  代わってお前が苦しめ!  そして俺はアンタの代わりに楽になる…――。  酷い頭痛と息苦しさに我慢出来ずに、そのまま自分を見失うような妄想を頭の中で無意識に並べたてた。 心臓の鼓動が早くなると続いて今度は、軽いパニック症状にも陥った。 「ヤバい、薬を飲まないと……!」  俺は直ぐに薬を飲もうとスクールバックから、慌てて薬ケースを取り出すと、水も飲まずに薬を何錠か急いで飲み込んだ。  暫くして薬が効いてくると、頭の頭痛も直ぐにとれた。胸の息苦しさもなくなり、呼吸も随分と楽になった。薬が効いて頭がフワリとすると自分でも不思議なくらい最高の気分になった。 どうしてこんな体になったのか。自律神経失調症の症状を抑える為には、もはやこの薬が日常的にも手放せない。薬の副作用も出るが仕方がない。  誰もこの世界で俺を救ってはくれない。  薬だけが今の俺を救ってくれる。これが、俺のリアルだった…――。

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