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―虚無の嵐―

 暫く経つと現場にパトカーが到着し、事故処理班も現場に駆けつけた。そしてその場で当事者を 交えての警察の現場検証が行われていた。そして数人ほど現場で事故を目撃していた人達は、警察の聞き取り調査に淡々と応じていた。  俺もその場に居合わせていたので、その現場にまだ残っていた。携帯を見ると時計は既に9時半を回っていた。1限目の授業もとっくに始まってる頃だった。俺は完全に授業に遅れた。急に疲れると深いため息をついた。 警察の話しと現場に居合わせた人達の話はこうだった――。 あの時、俺が自殺を決意して車道側に一気に飛び出した時。 後ろにいた年配の男性が突如、人混みを掻きわけて前にいきなり飛び出すと。 俺の背中を手で押して地面に押し倒し。自ら車に向かって一気に飛び出したらしい。  つまり、本当にアレは事故ではなく。 会社員の『自殺』だった。そして話によれば男性があの時、自殺をほのめかす言葉も直前に呟いていたらしい。  俺は男性に押し倒された事も、後からになって不意に思いだした。自分で躓いた感覚があの時、一瞬あったのは、偶然に躓いたんじゃなくて俺はあの時、地面に押し倒されたんだ――。  そこで再び愕然となった。辺りは警察の声と、事故の現場検証と野次馬の声で騒々しかったが、俺の耳の中はその音をシャットダウンするように何も聞こえていなかった。  無心になった俺の心は、全てを切るかのように現実から離れて1人だけの何もない世界の殻の内側に閉じ籠った。  時おり誰かが俺に話してくるが、そんなことはどうでもいい。俺は煮え立つような怒りの感情に胸の中が押し潰された。  この状況を前に人は本来なら何と思うだろう。多分俺は今、違う思いで胸が一杯だ――。

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