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―虚無の嵐―
憤りもない怒りに満ちていると、年配の男性が俺に指を指して言ってきた。
「あんた顔から血がでてるよ!」
そう言われて右手で自分の顔を触ってみた。触ると確かに顔に血がついていた。 だが、体に痛みもなく。自分が流血しているわけでもない。 これは俺の血じゃない。他人の血だ。
さっきの人の流した血が俺の顔についた。その場で全身が小刻みに震えると、体を震わせて言葉を失った。
言葉で言い表せない思いが、自分の中を瞬時に駆け巡った。 俺はその場で不意に思った。
また邪魔された…――。
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