俺は呆然とその事を思った。乾いた気持ちで、心を支配されながら。今の俺にはその事しか頭に思い浮かばなかった。 　他にどんな言葉があるのだろうか？ 　空虚に漂うような虚しい感情に、今はその言葉しか思いつかない。俺は再び、死の世界に行く事が出来なかった。 　人があの時、どんな思いで飛び込んだかそんなことさえも今は無駄になった。 ただ言えることは俺はまた誰かに先を越されたという事実だった。 　その事を思った瞬間。俺は力が抜けたように、微笑を浮かべて半笑いした。ただ今はもう呆れて笑うしかない。これ以上、いくら思っても虚しいだけだった。 「……あぁ。これで俺はあいつの言った通り、本当に死に損ないになったな――」 そう呟くと宙を見上げて絶望した。アスファルトに佇みながら、全身の力が一気に抜けたような気持ちに突如、襲われた。 　心が空っぽになったままボンヤリしていると、警察が一人俺の方にも聞き取り調査をしてきた。俺はその場で脱力感に襲われながらも、警察官の質問に淡々と答えた。 　警察が何かを尋ねるとその場で適当に答えた。それがどんな内容の話かさえも、今の俺には死ぬ程どうでも良かった。 ただ今は周りの雑音がうるさくて耳障りだった。そして、乾いた気持ちだけが底無しに煽り。俺の世界は現実から離れると、砂漠のようにますます 乾いた。