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―虚無の嵐―

 俺は男の手首を掴んだまま、夕焼けに染まった街の中を二人して走った。どこかのバス停場の近くに辿り着くと、そこで立ち止まり二人して息を切らした。 「ッ、はぁはぁ…! 何だよいきなり走って…!? うっ、吐きそう…――!」  男は俺にそう言うと気分を悪そうにしていた。俺は息を切らしながらその場で言い返した。 「お前があの時、俺に変なこというからだろ!」  俺は頭に血が昇りながらその事を言った。 「ふざけるな、誰がお前みたいな奴にホモるかよ!」    そう言って怪訝そうな表情を浮かべると、相手に敵意を剥き出した。 「ハッ、よくいうぜ。ますます剥きになって言い返すところが俺に言わせれば怪しいけどな?」 『なっ…何だって!?』 「それにあんな所でいきなり走ったら、ますます俺達周りの奴らに怪しまれたかもな」 『ッ……!!』 男は俺にそう言うと可笑しそうに笑った。そこでムッとなると黙って前を歩き出した。 男は俺の後を冷やかしながら歩いてついて来た。 「おい、何だよ。もう怒ったのか? あははっ! アンタわかりやすい奴だな!」  男は茶化しながらその事を言った。俺は完全に相手を無視して駅の方へと歩いた。 「……しかし、自殺志願者がまさか『ホモ』だったとわな。やっぱりアンタ、そう言う系か?」  男は俺をバカにすると再び茶化して来た。 『ふざけるな、誰がホモかよ!』  その言葉に思わず頭がカッとなると、俺は歩きながら怒鳴ってその事を強く否定した。男はそこで黙ると再び言ってきた。 「本当はオタク、俺に気があるんじゃないのか?」 『くどいっ!!』  その場で剥きになって否定した。男は俺の横に並んで来ると再び聞いてきた。 「……本当にそうなのか?」 「俺はホモじゃない!」 「本当に?」 「しつこいっ!!」 「あの時、黙って俺に見惚れていたのも違うってワケか?」  その場でカッとなって男の方を振り向いた。 『いい加減にしろよ、誰がお前みたいな奴に見惚れるかよ!』

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