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―傷跡とナイフ―

「やめてよ父さん、こんな――!」 言いかけた言葉をいきなり唇で塞がれると、胤夢は驚いた顔のままキスされた。   「ッン……!」  両手で突き放すと大きな声で怒った。 『何するんだよこんな所で、誰かに見られるかもしれないだろ!?』  青ざめた顔をすると、焦って周りを見渡した。するとあるものが彼の目に入った。 「ああ、すまない。今のは私が悪かった。だからそんなに怒るな」 「……」 「胤夢?」 父の声は彼には聞こえて無かった。ただ何処かを一点にジッと見ながら黙っていた。そして、視線を戻すと父の方に顔を向けて鋭い眼差しで見た。 「次。また人目がつく場所で俺にあんなことしたら、父さんとはもう口利かないから…――!」  そう言って言い放つと車から降りた。そして、走って学校の門をくぐると急ぎ足で校舎へと向かった。息子に一言言われると、運転席の前で彼は片手で頭を抱えながら溜め息をついた。そして、その場から車を走らせて遠ざかった。 息を切らして校舎の中に入ると、入口近くの下駄箱の前に彼は立ち止まった。そして、名前を確かめた。 「相葉貴也……」 名札を指先で擦り、そっと名前を口にした。胤夢はあの時の少年を見つけると、クスッと笑った。そして、下駄箱の前から離れると彼は立ち去った――。  

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