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―傷跡とナイフ―
学校に辿り着くと門の近くで車を停めた。胤夢は一言『ここで降りる』と言って、シートベルトを直ぐに外そうとした。すると父が話した。
「じゃあ、夜にあの店で二人で会おう」
「言わなくてもわかってる」
「なあ、胤夢――」
「もう遅れる」
「胤夢!」
慌てて車から出ようとする息子の腕をグイッと掴むと視線を向けさせた。ドアノブに掛けた手を離すと、振り向いて父の顔を見た。
「昨日は《《あんな事》》してすまなかった。まだ父さんを怒ってるか?」
「っ……」
その問に黙ると視線を反らした。
「頼むから私の目を見て答えてくれ!」
いきなり声を荒げると胤夢は一言話した。
「別に気にしてない」
「そうか…――」
その言葉に安心して胸を撫で下ろすと、掴んだ腕を離した。
「……なら良かった。父さん、お前に嫌われたかと思ってしまったよ」
「ごめん、もうチャイムが鳴るから行く」
「ああ、気をつけてな」
胤夢は父と別れ際に会話を交わすと、再びドアノブに手を掛けて車から出ようとした。すると、後ろから不意に手が重なった。そして、耳元で囁いた。
「お前と離れるだけで胸が切なくなるなんて……。ベッドでの温もりを思い出すだけで、こんなにも人は恋しくなるものなのか。なあ、胤夢…――」
耳元で囁かれると急に身体が熱くなった。咄嗟に手を振り払うと振り向いた。
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