――朝、学校へ向かう途中で俺は偶然にもあるものを目にした。それは俺の気の所為かも知れない。だが、あの姿が誰かと重なっていた。 校門の近くに赤い色のブガッティの高級スポーツカーが停まっていた。ひと目見て、一般人が乗る車ではないのはわかった。だからこんな場所に、お高い車に乗ってる人物が、どんな大物かが気になった。 　そう、ただの好奇心だ。だから前を歩きながら車の方を遠くから見て眺めた。自分にしては珍しく興味が湧いた。普段だったら目に留まるものも少ない方だ。だから、ほんの少しだけ気になっただけだ。 　まさかこんな派手な車で、誰かを送り迎えじゃないよな？ 　不意に心の中で思うとクスッと口元が笑った。 　一体、どんな金持ちが乗ってるんだ？ 校門の近くまで歩くと車の中がチラッと見えた。運転席と助手席に、二人組が乗っているのが確認できた。後ろ姿だったから顔は良く見えないが、何故か助手席に座ってる人物の服が俺と同じ学生服を着ていた。 　近づきながら歩くとそこで目を奪われた。中に居るのは男子生徒だった。そして良く見たら髪色が黒髪ではなく銀髪に見えた。その違いに不意にアイツの顔が頭に浮かんだ。 　そして運転席に居る男が男子生徒に一瞬、顔を近づけてキスしてるように見えた。その光景に胸がドキッとすると慌てて視線を反らして、門を足早に通り抜けた。 　今のは俺の気の所為かと思いながらも、他人の事で関わりたくない自分は、あえて見なかったようにして立ち去った。 　きっと今のは俺の見間違いだ。 　男同士で朝から冗談だろ。 　中に居た男子生徒がアイツな訳がない――。