110 / 121

惹かれ合うさき……

「そうだ、そうだとも……!」 「父さんと愛し合おう。誰にも渡さない、お前は私だけのものだ…――!」  きつく抱き締めると彼は自分を見失うように、我が子の顔に触れて耳元で禁断の愛を囁いた。  歪《いびつ》な愛ほど彼は益々正気を失った。そして、そのまま両手で抱きかかえるとベッドへ運んだ。  胤夢は正気を失った父の腕の中で、ただ黙って涙を流した。そして、全てがどうでもよくなると無抵抗のまま着ている服を荒々しく脱がされた。  それは獣《ケダモノ》の姿だった。白い綺麗な肌に無数の赤い跡をつけ、まるで真っ赤な大輪の花が胸元に咲くようなキスマークを体に付けた。 何も抵抗しない息子を見て、父はそのまま自分が思うままに行為を続けた。手と腕にキスをして、身体を舌の先端で這うように舐めた。その感触に声を押し殺して必死に耐えると、胤夢の首筋に啄むように口づけをして耳元で囁いた。 「愛してる、お前はとても綺麗だ。この世の誰よりも美しく光り輝いている。その目も顔も髪も何もかも全てだ。完璧で美しい、その愛らしい顔で私にどうか『愛してる』と言ってくれ――」  心酔した表情で父は言うと、胤夢は黙って首を横に振って拒んだ。 「ああ、分かってる。恥ずかしいんだろ。大丈夫ゆっくり時間をかけて二人で愛し合おう」 正気を失って暴走する父を前に、彼は戸惑うしかなかった。そして、大きな身体が自分の上に覆い被ってくると、息を呑み込んで声を震わせた。 「やめて父さん、こんなの間違ってる……」 「さあ、胤夢。私と一つになろう。そして心から愛し合うんだ。私と母さんみたいに…――」 「いやだぁ……!」  咄嗟に声を出して抵抗した。それでも止めずに力尽くで抱いてくると、胤夢はシーツをギュッと握って全身を引き裂かれる痛みに、涙しか出なかった。 「ああ、胤夢、胤夢……!」 「やだっ…――!」  強引に抱いてくる父に『嫌だ』と言うしか出来なかった。激しく抱かれると背中に爪を立てて、泣きながら父の耳元で『助けて』と繰り返し呟いた。その声すら彼には届かず、ただ思うままに我が子の身体を獣《けもの》のように貪った――。  

ともだちにシェアしよう!