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惹かれ合うさき……

  「何故、拒む……? 父さんが嫌いか――?」  いきなり拒絶されると父は驚いた顔で尋ねた。胤夢は赤いソファから立ち上がると窓際に走って逃げた。そして、息を切らして怯えた顔で佇んだ。 「どうした胤夢、そんな顔をして……」 「父さん正気に戻ってよ、こんなのおかしい……!」 「ああ、分かったぞ。お前は父さんの『愛』を試しているんだな」 「なっ、何言ってるんだよ…――!?」 「そうなんだろ。よし分かった……」 我を見失うように言うと近くのテーブルにあったワインクーラーからボトルを一本取り出して目の前で叩き割った。そして、床に散らばった硝子の破片を拾うとそれを持って話した。 「父さんは証明するぞ、お前を愛してる事を――!」  父は息子の前でそう言うと、右手に巻いていた包帯を解いた。そして、硝子の破片を握り締めると自らの手のひらを切りつけて見せた。その光景に唖然となると驚いた声を出した。 『何をやっるんだ父さん!?』 衝撃的な光景に胤夢は思わず動揺した。彼は自分の愛を証明すると言って、手のひらを縦に沿って破片でゆっくりと切りつけた。カーペットの床に血の雫がポタポタと流れ落ちた。その常軌を逸した父の行動に驚愕すると慌てて止めに入った。 「何してるんだよ、こんな事やめて! もう分かったからお願いだからやめて…――!」 目の前で正気を失う父の姿に胤夢は涙が溢れると泣きながら必死に止めた。それでもやめずに硝子の破片を握り締めながら、自分の手を刺して見せた。 『愛してるからやめてっ!!』  その一言に我に返ると握った硝子の破片を床に落とした。そして、身体を震わせて我が子の顔を見た。 「おお、胤夢っ…――! そうか、やっと父さんに言ってくれたか。そうだ、愛だ! 私もお前を愛しているぞ!」 父は震えた声で言うと前を見て強く抱き締めた。その目に正気を失った狂気さえも宿した。胤夢は気が遠くなりそうな顔をしながら、父の腕の中で繰り返し何度も呟いた。『愛してる、父さん愛してる』と必死に言った。目の前で父が壊れていく姿は、一人の少年の心を壊した。そして、その愛と狂気の中で彼は誰にも言えずに。ただ藻掻くように苦しむしか無かった。  

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