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惹かれ合うさき……

その日の夜、一人で部屋に籠もって机の前で勉強をした。そして切りの良い所で終わらすと座った椅子から立ち上がって、デスクライトの明りを消した。    明日の用意をする為、スクールバッグを開けて必要な物を入れたようとした時。中から、水色の封筒に入った手紙が落ちてきた。  それを見て昼間の事を思い出した。屋上で見知らぬ女子生徒にいきなり告白された。白いリボンを結ったポニーテール頭の女子生徒の顔が目に浮かぶと、あの時。俺の前で泣いて走り去った顔を不意に思い出すと羽柴の一言が脳裏に浮かんだ。 『せめて、手紙くらい見てから断れば良いじゃん』。あの言葉を急に思い出すと、その青い封筒を開けようか迷った。  渡された手紙を一度も読まずに、直ぐに突き返した。普通だったら、好きな相手にそんな事されたら彼女も傷付くに決まってる。 それも勇気を出して『告白』してきた彼女の思いを俺は何も考えずにただ突き返しただけだ。 あそこで手紙を読むべきだったのかも知れない。例えそれで断ったとしても、あんな事するんじゃ無かったな。 その所為で彼女の泣いた顔が目に浮かぶと、何故か胸に罪悪感を感じた。それにあの時、手紙も返しそびれた。自分の手元にある青い封筒を眺めると、そこで決心して手紙を読む事にした。 封筒を開いて中から手紙を取り出すと、そのままベッドに寝そべって読んで見た。其処には恋する少女の純粋な思いが綴られていた。  その手紙を最後まで読んだ後。俺はぼんやりと天井を見上げながら考えた。そして、その手紙を顔の上に乗せて溜め息をついた。やっぱりどんなに考えても、答えは一つしか無かった。  俺は誰かを愛したり、愛されるべきじゃない『人間』なのは分かってる。幸せを願う事さえも許されない。きっと彼女も俺と一緒に居たら不幸になる。そうして周りをいつも不幸にしてきたんだから。本当の俺は、自分が誰よりも良く知っている――。  

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