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秘密の関係 12
せっかく彼と色々出来ると思ったのに。海に行くなら午前中からでも良かったじゃないか……。
海に向かう車の中で、蓮は内心毒づいていた。練習が終わり次第ナギと合流し、ホテルへ行って……あわよくば最後まで……と、思っていたのに。
「……何を不貞腐れているんだ」
「……別に。何でもない」
バックミラー越しに感じる視線から逃れるように窓の外へと視線を移す。こんな事になるのならメッセージアプリのID位交換しておけばよかった。
移動するギリギリまで彼の楽屋を探してみたが見つからず、結局連絡先を交換することが出来なかったのだ。
せめて現在何に出ているのかとか、スタジオが何処か聞いておけばよかった。
約束した玄関前まで行ってみたものの姿は確認できずに、そのまま凛が準備した車に乗り込んだ為、彼の現在地さえ分からない。
怒っている、かな? 変に期待させて行かなかったら、冷やかしだと勘違いさせてしまったかもしれない。
大体、10月の海なんて絶対に寒いに決まっている。風は冷たいだろうし、濡れたら確実に風邪を引く。大体、雪之丞は今回の急な移動をどう思っているのだろうか? 誰かとデートの約束があったとしたら、迷惑以外の何ものでもないはずだ。
蓮はチラリと横を見た。雪之丞はずっと俯いてスマホを弄っている。
「なぁ、さっきから何やってるんだ?」
「えっ? ええっと……着くまで暇だし、アプリゲームを……」
「ふぅん」
視線を落としたまま答える彼の言動からは、特に焦ったり困っていたりする様子は見受けられなかった。 確かに、若干コミュ障の気がある雪之丞がリア充している姿は中々想像が付かない。
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