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一夜限りの……5

「もん……って。ノリノリで感じまくってたクセに」 「それは……だって……」 わざと意地悪く言えば、ナギは更に不機嫌になったようでプイッとそっぽを向いてしまった。 こういう所はまだまだ本当に子供のようだ。 「とにかく、今日はもうしないよ。流石に雪之丞に失礼だろ」 「……っ」 そう言い聞かせるように告げ、浴槽から立ち上がると、背後からギュッと抱き着かれた。 「おい……」 「待って、怒ったの? ごめんなさい……」 「怒ってないよ。ほら、出るぞ」 「うん……」 不安げなか細い声に苦笑しつつ、ポンポンと軽く頭を撫でてから脱衣所へと向かう。 風呂上りに上半身裸のままリビングでミネラルウォーターを飲んでいると、少し遅れて髪からナギがペタペタと歩いて来た。その髪はまだしっとりと濡れていて、髪の先からぽたりと雫が落ちる。 「たく、髪くらい乾かしてくればいいのに」 「お兄さんに、乾かして欲しいな」 甘えた仕草でそう言いながら手に持っていたドライヤーを手渡され、仕方がないなと小さく息を吐いた。 ソファに座らせて髪を乾かし始めれば、ナギは気持ち良さげに目を細める。手触りの良い茶色の髪がサラサラと流れ、まるで絹のようだと思いながら丁寧にブローしていくと、ナギの身体から力が抜けていくのがわかった。 「お兄さん」 「今度は何だい?」 「俺、お兄さんの事好きだよ」 「ははっ、そっか。ありがとう」 「もう、本気なのに……」 ナギはそれ以上何も言わなかった。大きな欠伸を一つして、ゆっくりと目を閉じる。 蓮も特に気にする事無く黙々と髪を乾かし、完全に眠ってしまったのを確認してから、そっと雪之丞の隣へと寝かせ、自分は客用の毛布を持ってきてソファに寝転がった。 「好き……ねぇ」 一体どういうつもりで言ったのか。自分と彼とは身体だけの関係だった筈だ。確かに何度か身体の関係を持った事で多少の情はあったがそこに恋愛感情は無かったと思うのだが……。 (まぁ……いいか) どうせいつもの戯言だろう。彼は人をからかうのが好きだし、動揺させて楽しもうと思っていたんだろう。と結論を出し、蓮も静かに眠りについた―――。

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