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失踪6

「兄さん……」 「実は、今日OSCから、正式にスポンサーを降りると連絡があった」 「え? はぁ!? ち、ちょっと待って! 兄さん! OSCって……」 兄の口から発せられた単語に驚きを隠せない。それはみんなも同じようで、目を丸くしながら口々に質問をぶつけ始めた。 それもそうだ。OSCと言えば日本を代表する大手メーカー。CMでも頻繁に見かけるし、自分達が出演する番組のメインスポンサーでもあった。 そんな企業が、スポンサーを降りた……? とてもじゃないが信じられない。 「原因は、わかっているんですか!?」 美月がいつになく悲壮感漂う顔で凛に詰め寄る。 「原因はだな……」 「OSCの代表取締役の人……監督の奥さんなんだって。それで、浮気がバレて奥さん怒って出て行っちゃったみたいで」 凛の後ろから突如現れたナギが神妙な面持ちでそう告げる。 その瞬間、一同は一斉に脱力し、はぁ~と大きな溜息を漏らした。 「そんな……」 「めちゃくちゃ私情挟みまくってるじゃん」 美月はガックリとうなだれているし、東海に至っては呆れた様子で頭を掻いている。かくいう自分も思わず力が抜けてしまった。 何だか一気に気が抜けたような気分だ。いや、だがしかし、これは由々しき事態だ。 「困りましたね。メインで動いていたCG担当者の不在に、大手スポンサーの降板……せっかく第一話が放送されて、注目度も上がって来ているのにこのままでは打ち切りになってしまうかもしれません」 弓弦の言う通り、これじゃああまりにもタイミングが悪すぎる。 何せ、CGは使えなければ、今後は巨大ロボットなしの展開に変更しなければならなくなるし、来るべきクリスマス商戦に向けて既に製作が始まっているおもちゃ業界にも大打撃になるだろう。 「嘘……。せっかく掴んだチャンスだったのに……」 「兄さん、この一カ月顔を出さなかったのは、今回のスポンサーの件と何か関係があるの?」 美月の絶望したような声を聞きながら、ずっと疑問に思っていたことを思い切って尋ねてみると、凛は静かにこくりと頷いた。

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