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嫌だ!! 2

全く、何なんだあいつは。男が去って行った方角を見つめ肩を竦める。 「もう! なんで威嚇しちゃったんだよ」 不満げな声が聞こえ、視線を落とすと、そこには頬を膨らませて拗ねたような顔をしているナギの姿が見えた。 「何のこと?」 「とぼけないでよ。さっきの人、僕の知り合いなんだよ?」 「へぇ、そうなんだ。知り合いねぇ……。ただの知り合いにしては随分距離が近かったような気もするけど」 「それは、向こうが勝手にくっついて来ただけだし」 「ふ~ん、そう」 彼が言葉を紡げば紡ぐ程、腹の奥底からどろりとした嫌な感情が頭をもたげてくる。 理性を総動員して必死に押さえ込まないと、言わなくていい事まで言ってしまいそうになり、グッと唇を噛んで耐えた。 ナギがあの男とどんな関係なのか考えただけでも吐き気がしてくる。 このモヤモヤの正体は一体……? 蓮は胸の辺りを押さえ、眉を寄せた。 「ねぇ、お兄さん。もしかして……ヤキモチ?」 「はぁ? 何で僕が……!」 「違うの?」 「……ッ」 上目遣いで尋ねられ、思わず言葉に詰まる。 確かに、あの光景を見た瞬間からずっと苛立っているのは事実だ。 だって、嫌だったのだ。ナギの身体に他の人間が触れているのが。 大した抵抗もせず、されるがままになっている姿にもムカついて仕方がない。 だが、嫉妬していると素直に認めるのも悔しくて、口を開こうとするが上手く言葉が出て来ない。 何も言えないでいると、ナギが面白い玩具でも見つけたかのようにニヤリと口元を歪めた。

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