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嫌だ!! 4
ロッカーで着替えている間も、蓮の心は決して穏やかでは無かった。先ほどの男の事が気になって仕方がなかったからだ。
彼の顔には見覚えがあるが、何処の誰だったのか中々思い出せない。
そもそも、何故朝から一緒に居たんだ? もしかして、昨夜いつの間にかナギが居なくなっていたのはヤツと一夜を共にしたからなのか?
嫌な妄想が頭を過り、ギリっと奥歯を噛み締める。
直接聞いてみようか? 疚しい事が何もなければ隠さずに答えてくれるはずだ。……だが、もし本当にそういう事をしていたとしたら……。
想像だけで怒りが沸々と湧いて来るのを感じる。
(ダメだ。このままだと仕事に支障が出る)
こんなこと位で心が乱れるなんて自分もまだまだ修行が足りないようだ。大きく深呼吸をし、何とか心を落ち着かせようと試みる。
「なに一人で百面相してんの?」
先ほどあった事など何も気にしていないかのようにいつもの調子で話しかけてきたナギの態度に胸がざわつく。
こいつは、自分の身体が他人の目にどう映っているか分かっていないのだろうか? あんな風に抱き寄せられても平然としていられるなんて……。あぁ、だめだ。やっぱり気になる。
「ねぇ、さっきの犬飼さんって人、本当にキミの友達なのか?」
出来るだけ自然に聞こえるように、努めて冷静に問いかける。
「何言ってるの? さっき説明したじゃん」
ナギは呆れたように溜息を零すと、肩をすくめて見せた。
その態度にますます苛立ちが増していく。
「……あの人、何処かで見た事あるなぁって思ってたんだけど……それに、友人だというには年が離れてるような気がする」
スーツのチャックを閉めマスクを小脇に抱えながら、鏡越しにナギを見る。
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