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縮まる距離感 11

ヒヤリとした感触に目が覚める。重たい瞼を開ければ心配そうに覗き込んでくるナギの顔が見えた。 ベッドの上に仰向けになって、所謂膝枕のような体勢で寝かされている。 「おにいさん大丈夫?」 「……うん」 「良かった。だから駄目だって言ったのに」 「面目無い」 まさにその通りである。結局あの後はのぼせて倒れてナギに大層迷惑をかけてしまったようだ。 今はベッドに寝かされていて、額には冷えピタが貼られている。どうやら介抱してくれたらしい。 パタパタと雑誌で風を送られながら申し訳なさでいっぱいになっていると、そっと髪を撫でられた。 「まぁ……誘ったのは俺だし、おにいさんのせいだけじゃないか」 「え?」 「なんでもない。それよりさ……今日はもう寝よっか。気付いてはいたんだけど、目の下すっごい隈だよ? 昨夜寝てないんでしょ」 「あー……まあ」 何か悩み事でもあるのか? と、訊ねられ、少し考えてから小さく首を振った。 「……恋人の前で隠し事しちゃ駄目なんだよ?」 「えっ? そ、そうなのか!?」 「そうそう。ってことで、教えてよ。何を悩んでるのか」 「いや……大したことじゃ」 「だーめ。俺が知りたいの。ほら早く」 有無を言わせない口調で言いながら鼻をムギュっと摘ままれて思わず口を開く。 「痛いって」 「言わないと、次はコチョコチョしちゃおうかな」 「……はぁ、わかったよ。言うから……。そう言うのなしで」 「やった。おにいさん大好き」 観念するとナギは嬉々として笑みを浮かべた。 本当に敵わないなと思いながら苦笑いして溜息をつく。 そして、俺は意を決して重い口を開けた。 「本当にたいしたことじゃ無いんだけど、うちの兄さんが、今回の失踪事件について何か知ってるみたいなんだ。だけど肝心な事は教えて貰えなくって……」 「それで気になって眠れなかったってこと?」 「まあ……そんな感じ」 「ふぅん……あの凛さんって人、怖いんだよね。何か底知れぬ闇を抱えてそうな感じがして」 「まさか。そこまで腹黒くはないと思うけど……」 ナギの物騒な発言に思わず苦笑いする。確かにちょっと癖のある兄ではあるが、そんなに警戒するほどではないはずだ。

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