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縮まる距離感 12
「そうかなぁ? イメージ的に鬼軍曹って感じ? お兄さんよりSっ気強そう」
「いやいや……流石にそれは」
否定しようと首を振るが、兄の姿を思い浮かべてみる。確かに、無口で近寄りがたい雰囲気を醸し出しているし、演技に対しての指導も厳しい。
だが、普段の言動を思い返すと、どちらかと言えば優しい方だ。特に弟の自分に対しては過保護なくらい甘いところがある。
まぁ兄がドSだというのは否定しないが。
「そう言えば……。雪之丞の方も、何か特殊なコマンドが使われてて、必殺技が出せないってぼやいてたし……、結局、カギを握ってるのは奈々さんって事になるんだよな」
「うーん、監督の奥さんがスポンサー辞めるって言い出した事件とのタイミングも計ったかのように同じなのも気になるよね」
「実は別々の事件じゃなくて、何か関連性がありそうなんだけど」
「……取り敢えず、悩んだって解決しないんだから。今日はもう寝ちゃおうよ。のぼせて疲れてるでしょ? 俺も明日は朝一で配信やんなきゃだし」
「配信?」
「そうそう、この間言ってた獅子レンジャーの。一応俺、これでも主人公だから」
「あー……そっか、そんな事も言ってたね」
そういえば先日、美月が公式チャンネルを利用して配信をやろうと言っていた気がする。あれから何の進展も無いと思っていたのだが、どうやらちゃんと進めていたらしい。
「ちゃんと起きれるのかい?」
「……ッ、酷いな。俺だってやる時はやるんだから早起き位出来るよ」
蓮の言葉にナギは一瞬言葉を失った後、拗ねたように頬を膨らませた。
まるで子供のような反応に思わず吹き出すと、彼は更に機嫌が悪くなったのかプイッとそっぽを向いてしまった。
その姿が何とも可愛らしくて、今度は声を出して笑うとそれが気に入らなかったのか、ナギがスッと足を引いたので蓮の頭がベッドにガクンと落ちた。
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