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気付いてよ 5
「あらあら、暗いわねぇ。お酒はもう少し楽しそうに飲むものよ?」
「ナオミさん……。ねぇ、お兄さ……蓮さんって高校時代って、どんな感じだったの?」
ナギは、目の前に置かれたカクテルを一口含むと、思い切って尋ねてみた。すぐ隣で雪之丞がピクリと反応しゆっくりと此方に視線を向けるのがわかった。
「うーん、そうねぇ……。一言で言えば絶対君主って感じ?」
「絶対……君主?」
「あの人、あのルックスでしょ? 昔はもう少しイキっててね~。自分の事「俺」って言ってたし、眼鏡掛けてて……、物凄く冷たくって俺の言う事は絶対だ。みたいな?」
ナオミの言葉に思わず言葉を失う。今の物腰穏やかそうな彼からはとてもじゃないが想像できない。
「すっごい虐めっ子でね、ちょっと気に入らないことがあると弱みを握って、道具みたいに扱うの。力づくで屈服させて、快楽に溺れさせて飽きたらポイ。 裏表が激しいから、裏の顔を知ってるのはごく一部で女の子は皆、彼に惚れ込んでたけど……。彼、男しか興味なかったから」
「へ、へぇ……」
なんとも言えない気分になりつつ、ナオミの話に耳を傾ける。快楽に溺れさせて、飽きたらポイ……?
もしかして、今はいいけど飽きたらいつか自分も捨てられたりするのだろうか?
そんなのは嫌だ。と急に不安が押し寄せて来る。
「好きな人とか……いなかったの?」
「そうねぇ、そもそも自分以外の人間は全員見下してるような奴だったし、あぁ、でも好きな人って言えば……、一人だけいたわよ。最近までずっと片思い拗らせてた人」
その答えにナギは目を見開いた。そう言えば、初めて会ったあの日、フラれて傷心旅行中だとかなんだと言っていたような気がする。
「人の気持ちなんて考えたことがない人だから、あれこれ裏で画策して強引に手に入れようとしてたみたいだけど、結局失敗しちゃったのよねぇ」
そう言って苦笑しながらナオミは肩をすくめた。
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