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接触 10

翌朝、どうにもジッとしていられず、蓮は早々に家を出る事にした。 冷たい風を感じ、コートの襟を寄せると、マフラーを巻き付けて歩き出す。 空はどんよりと曇っていて、雪でも降り出しそうな寒さだ。こんな日に外に出るのは億劫だったが、家の中に居ても気分が落ち着かなくて仕方がなかった。 こんなに早くスタジオに着いたってすることが無いのはわかっている。それでも、もしかしたらナギに早く会えるかもしれない。なんて年甲斐もなく淡い期待を抱いてしまう自分が居て、思わず苦笑してしまう。 家まで行ってみようかとも思ったが、用事もないのに行くのは流石に憚られるし、変に思われるのも嫌だったのでやめておいた。 時間まで筋トレでもして過ごせばいいだろう。もしかしたら雪之丞がもう来ているかもしれない。 彼とは未だにギクシャクした関係が続いているが、東雲から預かったキーワードを彼に託さなくてはいけない。 メッセージアプリで送ることも考えたが、自分たちの関係性を考えるとそれでは一層距離が出来てしまうような気がして、直接話すことに決めていた。 今日は朝からずっと撮影で忙しいだろうから、休憩中にでも話せるといいのだが。そんな事を考えながらスタジオ入りすると、案の定、スタッフ達が慌ただしく準備に追われている所だった。 「あれ? 蓮さん今日は随分早いんですね。おはようございます」 そう言って声をかけて来たのは、裏方時代に一緒に仕事をしていた真柴だった。 彼は昔からADスタッフとして現場に出入りしていて、蓮の事も昔から知っている数少ない人物の一人だ。 単純な性格をしているが裏表が無く、人懐っこい笑顔で接してくれる為、蓮も彼の事は嫌いではなかった。

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