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交錯する思い 2
「あ! 凛さん! おはようございます! 聞いてくださいよ、この二人朝っぱらからイチャイチャして……」
「お、おいっ!」
慌てて東海のわき腹を小突く。これ以上余計なことを言われてはたまらない。
「……」
だが、時すでに遅し。
「……ほう?」
底冷えするような声と共に、凛の視線が自分とナギの方へと向けられ突き刺さる。
「あー……。えっと……」
その冷たい眼差しに思わず口ごもると、凛はくるりと背を向けた。
「……話は後でじっくりと聞かせて貰おうか。蓮」
「は、はい……」
有無を言わせない迫力に、思わず返事をすると凛はそのままスタスタと歩いて行ってしまう。
「あーあ。怒らせちゃった」
「って! はるみんが余計な事言うからだろ」
「だから、はるみんって言うなって言ってんだろオッサン! オレは嘘は言ってないもん」
「もんとか言ってんじゃねーぞ、クソガキ」
相変わらず憎まれ口を叩く東海にイラっときて、頭を軽く叩こうとしたが避けられる。
「まぁまぁ、二人とも。御堂さん来ちゃったって事はとりあえず撮影始まっちゃうし、そろそろ行こう?」
見かねた美月に宥められるが、このままでは収まりがつかない。
「……そうですね。まずは目の前にある仕事を片付けましょう」
結弦は何か言いたげに蓮たちを見たが何も言わず、そのままスタジオへと入っていった。
「なんか、この間から草薙君に見られてる気がする」
「え? そう? 俺には普通だけどな……?」
「そっか……。気のせいかな?」
「気のせいだよ。それより行ってくる。俺らの方が先だしね」
「…ん。ナギ……」
ちゅっと額に一瞬触れるだけのキスをすると、ナギが目を丸くして固まった。
「頑張って」
「~~ッ、そう言うの、駄目だって言ってんのに……」
そう言いつつも何処か嬉しそうな表情を浮かべてナギが呟き、手を振ると照れ隠しなのか早足でスタジオに入っていく。その背中を見送っていると、後ろからトンっと誰かにぶつかった。
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