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交差する思い 6
兄は自分の性癖なんてお見通しだと思っていたし、基本的に今まで小言は貰っても、反対などされたことは無かった。
男と付き合い始めたからって動揺するタイプではないはずだ。
もしかして……。
「兄さんって、ナギの事好きだったのか?」
「違う」
即答で否定され、ホッと胸を撫で下ろす。良かった、もし兄と好きな奴が被っていたら不毛な戦いをしなければいけなくなるところだった。
だが、では一体何だというのだろう。蓮は不思議に思い、首を傾げた。
「……まぁいい。人前ではあまりいちゃ付きすぎるなよ。 世の中変わり始めたとはいえまだまだ、好意的に捉えてくれる奴は少ない。 お前は直ぐに周りが見えなくなる傾向にあるから、尻ぬぐいさせられる俺の身にもなってくれ」
「ハハッ。大丈夫だよ兄さん。迷惑かけないように善処するから。要は人前でイチャイチャしなければいいんだろう?」
「……そうだ。バカップルのレッテルを貼られないように気を付けろ。もう既に噂になり始めているんだから……」
そう言うと、凛は深いため息と共にヤレヤレと言わんばかりの表情で小さく首を振った。
何だか物凄い言われようではあるが、確かに一理ある。ナギはこれから羽ばたいていくのだから、自分が足を引っ張ってはいけない。気を付けないと。
「話はそれだけだ。もう帰ってもいいぞ」
「あ、兄さん。僕からも一つ聞きたいことがあったんだけど……」
「なんだ?」
「奈々さん失踪事件に、塩田って男が関わってるって事……兄さんは知っていたんだよね?」
まだるっこしいやり取りは嫌いでストレートに切り出すと、凛の瞳が大きく揺れた。
やはりこの反応。どうやら凛は事件の真相を少なからず知っているらしい。
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