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束の間 14
もっと言ってやれと心の中で応援していると、少し遅れてやって来た雪之丞がポツリと呟いた。
「僕は二人の女装姿見てみたいな」
「でしょ? ゆきりんわかってる~!」
「ちょっっ! 棗さん!? 何言ってるんですかっ!」
「そうだぞ、雪之丞! 僕らは男なんだから女装しても気持ち悪いだけだろ?」
慌てる弓弦を援護するようにそう言うと、「美月さんが男装してもいいとは思うけど、視聴者が二人の女装を見たいって言ってるんだよね?それに、聞いたよ。寝起きドッキリ失敗したんでしょう? 東海に聞いたよ」と、あっさり論破されてしまった。
それを言われると、辛いものがある。
正確には、失敗と言うより放送事故に近いのだが……。
「ゆきりんもああいってる事だし、ね? 二人とも、お願い」
ナギと美月に手を合わされ、更に雪之丞からも見つめられ、先に折れたのは結弦だった。
「――仕方ないですね。でも、放送事故になっても私たちは責任取りませんよ」
「って! 草薙君!? どうして僕までやる前提なんだ」
「対決でしょう? こうなったら一蓮托生。貴方も覚悟を決めてください」
「いやいや、決められるわけ無いだろ!」
「ほう? 蓮が女装するのか……面白そうだな」
騒ぎを聞きつけた兄まで便乗してきて、コレはいよいよ後には引けなくなった。
そもそも! 兄がナギにあんな事をせず、普通のリアクションをしてくれていたらこんな事にはならなかったのに!!
……まぁ、今更嘆いても遅いので、腹を括る事にする。
「あーもう!! わかったよ!! やればいいんだろっ! やればっ!! どうなっても知らないからねっ!!」
半ばヤケクソになりながら叫ぶと、ナギと美月はハイタッチを交わして喜んでいた。
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